5-1-10 監視システム並びに装置

1.10.1 監視システム

1.はしがき

 監視システムは、多数の測定局の監視データをテレメータ装置で収集し、常時集中監視するシステムである。
監視システムは監視対象から、次のシステムに分類される。

1) 環境監視システム
2) 発生源監視システム

 大気汚染防止法第22 条に常時監視、同法23 条に緊急時の措置等が規定されているので、これらシステムは、主として自治体で運用されている。これらのシステムの監視対象、監視項目を、表1 に示す。

 前記のシステムの監視対象は異なるが、システムを構成する機器は、計測器を除き同様であり、データ収集系、データ処理系、同時通報系、データ交換系、のサブシステムから構成される。

 これらシステムを採用するに当り、次の事項を検討する必要がある。

1) データ収集等に使用する伝送路種類
2) 測定局・測定項目数(将来分を含む)
3) データの処理の範囲
4) 表示方式
5) 将来の拡張性(ハード・ソフト)
6) マンマシンコミュニケーションの容易性
7) 各種バックアップ対策
8) システムのセキュリティー

 これらのシステムを構成する機器について、計測器を除き, 以下にその役割・概要を述べる。

2.データ収集装置(テレメータ)

 テレメータシステムは、一般に計測器設置局を、測定局・観測局あるいは子局, 集中監視局を、中央局あるいは親局などと呼んでいる。テレメータ装置の機能は、測定局の測定データ(アナログ入力、パルス入力、接点入力)を子局装置から中央監視局に伝送し、データ処理装置に出力するものである。システム形態は、親:子が1:N 方式のディジタル方式が多く、伝送方式も親から子を呼び出し、データを収集するポーリング方式が多い。
 使用する伝送路としては、有線と無線がある。有線は、NTTの専用線が用いられてきたが、インターネットの普及にともない、安価で高速・安全なISDN、ADSL、光ファイバなどの公衆回線が使用されるようになってきた。無線は、400MHz 帯の無線が使用され、県規模の広域システムで使用されるケースが多い。無線を使用する場合、地形等により中継局が必要となる。

3. データ処理(周辺)装置

 収集されたデータから、環境や汚染の状況を判断し、住民に影響ある状況か、これに近い状況か等の判断を行う。また、外部への通報が必要か、さらに広域の情報が必要なのかも判断される。
 監視システムで使用されるデータ処理装置は、従来、ミニコンピュータが用いられてきたが、サーバマシンやパソコンを主体としたダウンサイジング、汎用型ソフトの採用によるシステムのオープン化が進展し、機能の高度化、複合化, ネットワーク化が加速している。
 補助記憶装置としては、磁気ディスク、光磁気ディスクなどが用いられている。コンピュータ周辺機器の進歩・世代交代は早いため、ディスクなどの「記憶媒体」の寿命よりも「読み取り装置」の陳腐化が早い場合がある。そのため、システム更新の際には、過去のデータを新システムの補助記憶媒体に移すことが望ましい。

4. 同時通報

 外部への通報が必要な場合、同時通報装置を用い、光化学オキシダント注意報などの緊急措置の発令・解除を、住民や緊急時措置対象工場・事業所など、多数の相手に対して同時に伝達するシステムである。通報先としては、①市区町村あるいは保健所、消防署などの行政機関,②学校(教育委員会), ③遊園地やプールなど人が多数集まる場所, ④街頭の表示器, ⑤有線などの地域放送、電話のサービス, ⑥緊急時措置対象工場・事業所⑦報道機関⑧気象台などがある。
 緊急措置情報は、音声ブザー, ランプで知らせる同時通報用端末装置の他に、ファクシミリ通信網の同報機能を利用して、文書による通報を行う例が増えてきている。

5. データ交換(公開)

 従来、データ公開は、街頭の広報表示装置や、役所のロビーなどに、大型表示装置などで行ってきたが、自治体のホームページのウェブサイトに公開する例が増えてきた。また、環境省が構築した大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」へ、データを転送する事で、全国規模のデータ監視が可能になっている。
 データ交換系は、近隣の地方自治体の間でオンラインによりデータ交換を行うシステムである。都道府県と市区町村の間のデータ交換は、都道府県内のデータを集中監視して、光化学スモッグの予報, 注意報, 警報の発令や解除などの緊急時措置を都道府県が実施することを、主目的に行われている。

1.10.2 その他の監視システム

1.はしがき

 1.10.1 に含まれないその他の監視システムとして、多くのものがあるが、そのうち主なものについて、簡単に紹介する。

2. 大気汚染総合監視システム

 このシステムは、測定場所で大気汚染物質濃度・気象要素を測定し、データロガーで自動校正、測定データの処理などを行うシステムである。

3. 移動測定車

 監視システムの測定局には、固定局と移動局があり、移動局は、任意の場所で偶発的に発生した大気汚染、あるいは特異性をもつ大気汚染が発生した時に対応する目的と、固定局の測定網の補助的な役割を持つ。移動測定車には、各計測器、サンプラ、データ処理装置などが搭載され、大型バスなどが利用される。また、無線や移動体通信を利用した監視システムの場合、テレメータ装置も組み込み、集中監視も行えるようになっている。なお、航空機に搭載し、広域立体測定に使用するものもある。

4. 排ガスモニタリングシステム

 一般廃棄物焼却炉の排ガスの濃度監視などを行うシステムで、SOx、NOx、HC、HCl などの排ガス成分を、連続監視し記録するほか、O2、CO2 も測定可能であり、燃焼管理にも使用できるコンパクトなシステムである。

5. 有害大気汚染物質

 平成8 年(1996 年)の大気汚染防止法改正で、低濃度長期曝露で発ガン性などが懸念される有害な大気汚染物質について、健康被害の未然防止の観点から、モニタリング、公表、指定物質の排出抑制基準などの規定が追加された。
 法律では、「継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがある物質で、大気の汚染の原因となるもの」と定義されており、大気中の濃度低減を急ぐべき物質(指定物質)として、ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロエチレン、ダイオキシン類等が取り上げられ、工場・事業所からの排出抑制対策が進められている。

6. 酸 性 雨

 東アジアにおける酸性雨への共通理解を形成し、情報交換による各国間の協力を推進することを目的として、「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」が、平成13年(2001 年)から本格稼動している。現在、カンボジア、中国、インドネシア、日本、韓国、ラオス、マレーシア、モンゴル、フィリピン、ロシア、タイ、及びベトナムの12 カ国が参加している。事務局は国連環境計画(UNEP)にあり、ネットワークセンタとして新潟の日本環境衛生センタ・酸性雨研究センタが指定されている。

7. そ の 他

 前項の酸性雨や地球温暖化などの広域環境問題に適切に対処していくための観測・監視が重要になってきている。以下に、その他の大気環境の測定システムを示す。

1) 地球全体のCO2 濃度の動向を把握し、発生源と環境濃度の関係を明らかにするためのCO2 モニタリングシステムが離島等に設置されている。
2) 近年の社会現象になっている花粉症対策として、花粉モニタリングが始まっている。
3) 日本、中国、韓国及びモンゴルの4 か国で、黄砂観測日数が増加傾向にあり、日本でも浮遊粒子状物質による大気汚染、視程障害、洗濯物や車両の汚れ、農業関係被害の増加が懸念されていることから、黄砂モニタリング専門家ネットワーク会合が始まった。

目次へ
ページトップへ