5-1-7 多成分計測器

1.7.1 環境大気用

1.はしがき

 大気汚染物質の内、二酸化硫黄、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、二酸化窒素、光化学オキシダントには、環境基準が定められており、全国の測定局で監視が行われている。測定局には、一般環境大気測定局(一般局)と自動車排出ガス測定局(自排局)の2 種類があり、設置目的で分類される。
 一般環境大気測定局は、大気汚染防止法第22 条に基づいて、環境大気の汚染状況を常時監視(24 時間測定)する測定局で、自動車排出ガス測定局は、大気汚染防止法第20 条及び第22 条に基づいて、自動車排出ガスによる環境大気の汚染状況を常時監視(24 時間測定)する測定局である。
 測定結果から得られる大気汚染状況は、環境省のホームページ中の「そらまめ君」と呼ばれる広域監視システムから得ることができる。詳細は、環境省のホームページを参照されたい。また、一般環境大気測定局及び自動車排出ガス測定局の設置状況についても、環境省のホームページを参照されたい。

2.測定方式

 環境大気用の多成分計測器は、基本的に2 台以上の単成分測定装置を一つの架台にまとめて組込み、サンプリング系路を共通化し、多成分計としたものである。測定成分に応じてJIS 規格が定められており、表1 に、概要をまとめる。詳しくは、それぞれの単成分計の項目にある説明を参照されたい。

1.7.2 固定発生源用

1.はしがき

 大気汚染防止法では、固定発生源(工場や事業場)から排出される二酸化硫黄や窒素酸化物など大気汚染物質について、物質の種類ごと、排出施設の種類・規模ごとに排出基準等が定められており、大気汚染物質の排出者は、この基準を守ることが義務付けられている。また、排出者は大気汚染防止法施行規則に基づき、これらの排出量を測定・記録しなければならない。
 ここでは、一台の計測器による多成分測定の、主な測定方式について述べる。固定発生源用の多成分計測器としては、紫外線吸収法や赤外線吸収法、ガスクロマトグラフ法による計測器が普及している。使用目的は、規制に関連した煙道排ガス監視用から有害ガス処理プラント管理用まで多岐にわたり、測定方式も種々のものがある。

2.測定方式

2.1 非分散形赤外線吸収法(二成分測定)

 SO2、NOx(NO)、CO は、それぞれ赤外域での特有の波長の光(SO2:7.4μm、NO:5.3μm、CO:4.6μm)を吸収する。したがって、これらのそれぞれの波長にのみ感応する二個の検出器によって、測定ガス中を通過した後の赤外吸収を測定すれば、それぞれの成分の濃度が測定できる。
 図1 に原理を、図2 に光学系における赤外線吸収を示す。第1 検出器は、第1 成分と干渉成分(A)に感じ、第2 検出器は、干渉成分(B)だけに感じる。A とB の面積(干渉出力値)が等しくなるように電気的演算をすれば、干渉を受けずに第1 成分の出力だけが得られる。第2 成分も同 様にC とD の面積を等しくして、出力値を得ることができる。このようにして、(NOx、SO2)、(NOx、CO)、(SO2、CO)などの組合せで煙道排ガス中の二成分を測定することができる。

2.2 紫外線吸収法(二成分測定)

 この方式は、測定ガス中のSO2、NOx が同時に測定で きる方式として使用されている。SO2、NO、NO2 は、紫外域で特有の大きな吸収スペクトルをもち、共存ガス(たとえば、H2O、CO2、CO、CH4 など)の吸光係数は、測定成分の10-3 ~ 10-5 倍程度と小さく、選択性が良い。このように、SO2、NO、NO2 だけが、そろって大きな吸収帯を持つことは、赤外域では得られない特有の性質である。各測定成分の吸収波長をみると、SO2 の吸収は、287 nm付近にあるが、この波長ではNO2 のスペクトルが重なる。また、NO は、226 nm に吸収があるが、この波長域では、SO2 とNO のスペクトルが重なる(図3)。したがって、SO2、NO の各濃度は、各吸収から直接求めることはできない。このため、測定装置では、スペクトルの重なりを電気的演算で打ち消す方法(多成分演算法又は多波長方式と呼ばれている)を用いる。NOx は、NO とNO2 の加算で求められる。

 図4 は、多成分演算法による紫外線吸収法NOx/SO2計の構成を示す。装置本体は、ガス導入部、光学部、電子回路部の各部で構成されている。本体内の除湿器は、ガスセル内での水分の凝縮を防ぐ働きをする。除湿された試料ガスは、導入部を経て光学部内のガスセルに導かれる。光学部には、紫外線を発生する重水素ランプ、三つの波長の単色光を同時に取り出す分光器、光レベルを検出する光検出部があり、ガスセル内の測定ガスの各波長における吸収量が測定される。電子回路部には、光検出部からの電気信号から透過率を求め、SO2、NOx を算出する演算回路が内蔵されている。なお、試料ガス採取系は、化学的な前処理やコンバータが無く、しかもSO2 とNOx が全く同一のガス経路で測定されるので、単純化されている。

2.3 ガスクロマトグラフ法(GC 法)

 ガスクロマトグラフ法は、一定流量に保ったキャリヤーガス(窒素やヘリウムなどの不活性ガス)を、細かい粒子を充てんした管又は内壁を液体でコーティングした細い管(カラムという)に通し、このガス流に一定量の試料ガスをパルス状に挿入してカラム内に送り込む。カラム内で試料ガス中の各成分は、充てん物に対する吸着性又は溶解性の差異に基づいて、カラム内の移動速度に差異が生じて分離され、カラム出口に接続された検出器を順次通過して、濃度に対応した電気信号が取り出される。
 ガスクロマトグラフ(GC)の基本構成を、図5 に示す。カラム槽は、GC の心臓部であるカラムを収納し、検出器槽はGC 法の特徴ともいうべき種々の検出器を収納する。温度制御部は、カラム槽、検出器槽、試料導入部の温度を調整する。ガス流量制御部は、キャリヤーガスや検出器の種類によって必要な水素、空気などのガス流量を調整する。応答制御部は、検出器出力を試料濃度や所要精度などに応じて調節する。記録部は、出力をアナログ的に表示するペン書き記録計のほかアナログ出力を適当に演算し、デジタル出力として表示するものがある。GC に用いられる検出器には種々のものがあるが、現在使用されている代表的なものを表2 に示す。測定成分に応じて適当な検出器を選ぶ必要がある。

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