5-1-1 一酸化炭素計測器

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 一酸化炭素(CO)は、酸素が不足した状態下で、燃料が燃焼すると発生する。代表的な発生源は、自動車の排ガスであり、交通量の多い道路・交差点や長いトンネル内、地下駐車場などで高濃度汚染が発生する。このほかに、工場の特定施設、たとえば、溶鉱炉、ガス発生炉、エンジン検査台などで、これらの施設が発生源となり、局部的な環境汚染が起る。このほかにも、ボイラなどの燃焼排ガスがあるが、自動車排ガスに比べるとCO 排出量は少ない。

1.1.1 環境大気用

1. はしがき

 環境用計測器は、市街地路上やトンネル内、工場構内の発生施設付近などで測定する必要があり、一般に、市街地、無人の測定局舎内又はトンネル内に配置される。また、工場構内では作業環境雰囲気を測定するため、測定装置には人手がかからず連続測定ができ、長期使用に耐え得る安定した性能が要求される。
 現在、環境用には、一酸化炭素の分子特有の赤外線吸収を利用した非分散形赤外線吸収法(NDIR)を採用した装置が最も多いが、このほかに、定電位電解法、水素炎イオン化検出法(FID)、接触燃焼法及び検知管法も使われている。JIS B 7951 「大気中の一酸化炭素自動計測器」では、非分散形赤外線吸収法が規定されている。そのほかの測定原理の計測器として定電位電解法についても記載されている。
 以下に、非分散形赤外線吸収法、定電位電解法の原理及び特徴を述べる。

2.測定方式

2.1 非分散形赤外線吸収法(NDIR 法)

 図 1 に、環境用一酸化炭素計測器の流路系統図の代表例を示す。

環境用一酸化炭素計測器の流路系統図の例

 計測器は、試料採取部、赤外線ガス分析計、校正用ガス、指示記録計、及び、その付属装置から構成される。試料採取部は、大気中の粉じんを除き、必要に応じて水分を除去するか、又は、一定に保ち、分析計に1 ~ 3 L/min 程度の試料を連続的に一定流量で供給する。冷却除湿器には、電子冷却式除湿器などが用いられ、試料大気は、通常、1 ~ 7 ℃に冷却されて、水蒸気分圧が、1 ~ 7 ℃飽和の一定状態に調整される。この時生じる凝縮水は、トラップを用い排出される。これは、試料大気中の水分による干渉影響を一定にして、測定値への影響を軽減するものである。ただし、分析部に干渉補正機能を装着した装置では、電子式冷却器が取り付いていないものもある。乾燥期の大気のように、水分が3 ℃飽和以下になる場合には、冷却除湿器の直前に加湿器を設け、水中バブリングなどにより3 ℃飽和以上の水分を含ませる。

 赤外線分析計の試料セルの長さは、通常100~500 mmのものが用いられる。また、CO2 及び水分の干渉を除くため、光学フィルタやガスフィルタを使用することによって、CO2 や水分の赤外線吸収帯と重なるCO の赤外線吸収帯を除き、CO のみの吸収帯を利用して測定する。

 赤外線ガス分析計は、一定周期で、ゼロガス、スパンガスにより校正を行う必要があるが、これを自動的に行わせる自動校正器が付属しているものもある。校正は、概ね1 日に 1 回から1週間に1回行うものが多く、所要時間は約10 分間以下である。また、環境用では、測定値(瞬時値)の一定時間(たとえば1 時間)毎の濃度平均値を得る平均値演算器を付属している。

計測器は、通常、測定点に設置され、ここからテレメータにより中央のデータ処理装置に測定値を伝送することが多い。このため、計測器は、テレメータへ入力する測定状態の情報信号(例えば測定レンジ、校正中、校正不能、保守中など)の発信機構を合せ持っている。また、工場、トンネル内、屋内駐車場など比較的狭い場所で数個所の測定を必要とする場合は、それらの環境大気を一定時間間隔で、順次自動的に切り換え採取し、一台の計測器で多点測定をする場合もある。図 2 に、その流路系統図を示す。

多点自動切換測定の場合の流路系統図の例

 環境用一酸化炭素計測器は、環境基準に対応して用いられることが多いが、大気汚染対策による低濃度化が進んだため、目盛の低濃度化が必要である。このため、赤外線ガス分析計に高感度検出器を用い、これにゼロ点連続補正機能を付加して(試料ガスと基準ガスを分析計のセルに交互に導入し、その差を電気信号として取り出す方法)、0 ~ 5 ppm の低濃度測定を可能にしたものがある。図3 に、その系統図を示した。

高感度一酸化炭素計測器の系統図の例

 この計測器では、試料ガスを二つに分けて、一方の流路にコンバータを設けて、試料ガスのCO をCO2 に変換し、他方は、そのままとする。これらのガスをセルに交互に流入させることにより、+-両極の信号を取り出すことができる。この二つの信号を差分演算することにより、高感度化を図り、ゼロドリフトに対する性能を向上させている。

 同様の構成であるが、図4 のように回転セクタを使用せず、測定セルを1本として、一定周期で動作する切換弁(電磁弁)によって、試料ガスと比較ガスをセルに導入し、得られる変調信号を増幅して測定する計測器もある。

測定セルが一本の計測器の例

 図5 のように、測定ガスと比較ガスを封入したガスセルを回転させ、測定ガスフィルタと比較ガスフィルタとで得られる差信号を用いるものもある。ガスセルの代わりに固体多層膜干渉フィルタを回転させる計測器もある。

ガスフィルタ相関法による計測器の例

2.2 定電位電解法

 定電位電解法による一酸化炭素測定方式は、ガス透過性隔膜を通して電解質中に拡散した大気中のCO を、定電位に保たれた電極上で電気化学的に酸化し、その際、発生する電解電流によってCO 濃度を連続的に測定するものである。この計測器は、小型・軽量で、移動測定にも適している。計測器の構成例を、図 6 に示す。

定電位電解法による計測器の構成例

1.1.2 固定発生源用

1. はじめに

 煙道排ガス用は、煙道付近に設置され、測定値はコントロールセンタに伝送される。計測器は、無人で連続運転となるこのため、大気測定用と同じく人手がかからず、連続測定ができ、長期使用に耐え得る安定した性能が要求される。現在、煙道用の測定方式は、非分散形赤外線吸収法(NDIR)を採用した装置が最も多いが、このほかに、定電位電解法、接触燃焼法も使われている。

 以下に、非分散形赤外線吸収法、定電位電解法、接触燃焼法の原理及び特徴を述べる。

2. 測定方式

2.1 非分散形赤外線吸収法(NDIR 法)

 図7 に、固定発生源用一酸化炭素計測器の流路系統図の代表例を示す。

固定発生源用一酸化炭素計測器の流路系統図の例

 煙道用一酸化炭素計測器は、試料ガスが高温・多塵・多湿であるため、流路での凝縮水や粉じんによる詰まりを防ぐよう設計されている。装置は、試料採取部、除湿器、赤外線ガス分析計、校正用ガス、指示記録用信号、及び、その付属装置から構成される。試料採取部は、試料ガスの粉じんを除き、除湿器にて水分を除去するか、又は、一定に保ち、分析計に0.5 ~ 3 L/min 程度の試料を供給する。冷却除湿器には、電子冷却式除湿器などが用いられ、試料大気は、通常、1 ~ 7 ℃に冷却されて、水蒸気分圧が1 ~ 7 ℃飽和の一定状態に調整される。この時生じる凝縮水は、トラップを用い排出される。これは、試料大気中の水分による干渉影響を一定にして、測定値への影響を軽減するものである。ただし、分析部に干渉補正機能を装着した装置では、電子式冷却器が取り付いていないものもある。

 赤外線分析計の試料セルの長さは、通常50 ~ 500 mmのものが用いられる。また、CO2 及び水分の干渉を除くため、光学フィルタセルやガスフィルタを使用することによって、CO2 や水分の赤外線吸収帯と重なるCO の赤外線吸収帯を除き、CO のみの吸収帯を利用して測定する。

 最近の分析計には、干渉成分の影響や光源などの劣化によるドリフトの影響を除き、安定かつ正確な測定ができる複式検出器を用いたものが開発されている。図8は、複式検出器を用いた赤外線ガス分析計の動作原理図である。検出器は、測定用と補償用の二つの検出器から成る。測定用側では、測定成分A と妨害成分B の信号を取り出し、補償用側では、妨害成分B の信号を取り出す。これらの信号は、増幅、減算され、目的の測定成分A の信号のみを指示させることにより、妨害成分の影響を受けずに測定ができる。赤外線ガス分析計は、一定周期で、ゼロガス、スパンガスにより、校正を行う必要があるが、これを自動的に行わせる自動校正器が付属しているものもある。校正は、概ね1 日に1 回行うものが多く、所要時間は、約10 分間以下である。

複式検出器を用いた赤外線ガス分析計の動作原理図

2.2 定電位電解法

 定電位電解法による一酸化炭素測定方式は、ガス透過性隔膜を通して電解質中に拡散した大気中のCO を、定電位に保たれた電極上で電気化学的に酸化し、その際、発生する電解電流によってCO 濃度を連続的に測定するものである。この測定器は、小型・軽量で移動測定にも適している。定電位電解法による計測器の構成例を、図 9 に示す。

定電位電解法による計測器の構成例

2.3 接触燃焼法

 接触燃焼法による一酸化炭素測定方式は、試料ガスを一定温度に加熱した酸化剤表面上に導き、この酸化剤表面でCO が燃焼するときの発熱を利用する。表面が酸化剤処理された白金線をブリッジ回路の一辺として組むと、CO が燃焼したとき、白金線の温度が上昇して電気抵抗が増し、ブリッジの平衡がくずれる。この時の不平衡電流を信号として取り出す。
 この方式は、比較的高濃度のCO 測定に用いられるが、低濃度のCO 測定には、検出器として熱電対やサーミスタを使用してCO の燃焼熱を検出する。この測定方式は、可燃性ガスが共存する場合には適さないが、可動部が少なく、丈夫であり、装置を小型にすることができるので、持ち運びに便利で、電池電源にすることもできる。図10に、接触燃焼法の検出原理図を示す。

接触燃焼法の検出原理図

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