2-1-10 画像センサ

 画像センサは、旧来撮像管と言われる電子管を使用したテレビカメラを中心に被写体を撮像し、2値化・微分などの方法によって特徴抽出する方式がとられていた。撮像管を使用したカメラの場合、駆動回路の複雑さや強い光に対する撮像管ダメージが影響し、特殊用途や監視用に使用されるにとどまっていた。近年の半導体進歩により、1次元または2次元のCCD撮像素子が発達し、ハンディ型ビデオカメラや工業用CCDカメラとして使用されるようになった。また、コンピュータのオペレーティングシステムのWindows95の発売によりコンピュータとフレームグラバボードを組み合わせた計測装置が容易に製作可能となり、画像センサとして急速に工業分野への応用が進み、画像センサの大きな特徴である非接触測定を生かし、人間の入れない場所での計測を始め、高速処理、微細計測などに地位を確立してきた。

 画像センサは、CCDカメラが撮えた電気信号を単純な2値化を始めラプラシアン処理、空間フィルタ処理などの処理を行い、被写体の寸法、傷や欠けなどの欠陥、ゴミなどの異物などを検出するものである。

 このように容易に使用できる万能な画像センサであるが、1つ注意しなければならない点として奥行き方向が容易に判断できない点がある。一般に図2に示すような配置にて1次元または2次元の計測が行われる。計測条件が変化しない計測方式の場合はこの限りではないが、被写体位置が実線と波線のように前後方向にずれが発生する場合、この距離の違いがCCDカメラ撮像時被写体サイズの違いとなって撮らえられる。これが実寸法計測の誤差となってくるのである。あらかじめ距離がわかっている場合は補正が可能であるが、距離のわからない場合はサイズのわかっている被写体を常時被写体と一緒に撮像することにより補正可能となるが、多くの場合補正方法が無い。

画像センサによる計測の注意点

 撮像素子としては1次元センサと2次元センサがあり、各々の特長を生かし、用途に合わせたセンサ選択が必要となる。

  1. 1次元カメラ
     CCD素子を1次元的に配列したもので、2次元CCDセンサに比べ高速走査が可能、数百~数千画素の高分解能計測が可能などのメリットがある。また、高感度化を行う方式として、1次元CCD素子を2次元的に数十画素配置し、高分解能を保持しながら被写体移動に合わせてCCD素子上に得られた被写体電荷データを転送するTDI(Time Delayed Integration)方式も実用化されている。
  2. 2次元カメラ
     一般的にCCDカメラに代表されるもので、より高分解能化が進み、35万画素~230万画素の素子が実用化されてきている。2次元素子の為、リアルタイムに計測範囲が画像として認識できるため、計測範囲の確認が容易というメリットがある。反面、画素数の増加に伴い走査速度の低下のデメリットも発生してくる。
  3. カラーカメラ
     フィルタ分離方式の単板CCDセンサ方式とダイクロイックミラーを使用した3板CCDセンサ方式があり、使用目的に合わせて選択が行える。色情報を含めた高分解能を望む場合は、3板CCDセンサが適している。容易に色抽出して処理が行え、被写体検出の能力アップに一役買っている。カラーCCDセンサはRGB方式による色分割が一般的である為、色度を正確に測定する場合は一考を要する。

 このような多種多様なCCDカメラを応用した画像センサは、以下のような処理により検出を行っている。

  • CCDカメラ情報をアナログ信号からデジタル信号に変換(高分解能2次元CCDカメラに於いてはデジタル出力機能を持ったものもある)する。
  • 変換された信号は、前処理としてノイズ除去や輝度補正が行われる。
  • 補正後2値化、比較、フィルタ処理などにより特徴抽出を行う。
  • 特徴抽出した信号から求める文字、サイズ、欠陥などを抜き出す。
  • 検出量を判定しホストコンピュータに判定値または測定値を転送する。

 コンピュータの発達により、特別なハードウエア追加無しにてリアルタイム計測が行えるようになってきた。より高度な処理や高速化が要求されるようになり、専用の処理プロセッサやデジタル信号処理器を用いて対応が図られている。また、判別精度を向上するために人工知能的なニューロ技術も取り入れられている。

 これらの技術を生かした汎用的なFA画像センサとして以下のものがある。

  1. 寸法計測
     物体のサイズ、幅、1次元変位量、2次元位置などの座標情報を計測するもの。
  2. 位置決め
     物体の形から位置や姿勢情報を計測するもの
  3. 粒度分布計測
     物体の周長、面積、投影長、2次元位置情報を計測して粒子の分布状態を計測するもの
  4. 文字/形状認識
     文字や物体形状の特徴から文字の種類、同種類の形状などの認識を行うもの
  5. 欠陥傷検出
    物体表面にある微細な欠陥、傷の輝度変化を検知してフーリエ処理などにより欠陥を検出するもの
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