1-4 プロセス用監視制御システム

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はしがき

 本技術解説でシステムと分類しているものは、多数の計装ループをまとめて管理する多機能の受信機器とも称するシステム製品である。さらに本編には、通信機能や特定用途のための専用装置も含まれている。
本編におけるシステム製品の分類は、次の通りである。

 4.1 生産管理システム
 4.2 分散形制御システム
 4.3 バッチ計装制御システム
 4.4 PLC計装制御システム
 4.5 伝送システム
 4.6 多点監視制御システム
 4.7 その他の専用装置

 工業計器分野における多数ループを対象とする多機能のシステム製品を歴史的に振り返ってみると、最初、走査器(スキャナ)を持った簡単なモニタやデータロガ、さらにプロセスコンピュータ、プログラマブルコントローラが開発され、1970年代半ばには分散形制御システム(DCS)が発表された。最近ではDCSも、計装、電気、計算機制御を統合的に扱う統合(総合)制御システムへと発展している。また、今後はフィールド機器のインテリジェント化、通信仕様の標準化とあいまって、フィールド分散システムへと進展すると予測される。

 通信機能については、監視、制御の広域化、あるいは計装工事費の本質的な高騰に対応するために導入されたテレメータやデータウェイ(タイムシェアリング伝送路)がある。さらに最近では、ファンデーションフィールドバスなどのフィールドバスが標準化され、フィールド機器とコントロール機器を結ぶデジタル通信用バスとして導入されようとしている。
 その他の専用装置には、電力・製紙・電気等多岐にわたる分野専用に設計されたシステムがある。

 最近の特徴として、マイクロコンピュータを組み込んだ制御装置の導入が盛んである。
 プロセス用監視制御システム製品の開発項目としては次の各項が考えられる。

  1. 機器のコンパクト化と高信頼度化
  2. 在来の技術では実現し得なかった高機能の実現
  3. 集中化、情報処理機能による運転の省力化
  4. 半導体技術の発展とその応用によるコストパフォーマンスの改善
  5. システムとしてのフレキシビリティの向上
  6. CRTオペレーションによる監視、操作の合理化
  7. 二重化等、冗長化システムによる高信頼性確保
  8. 監視、制御の高度化実現による計装・電気・計算機制御の統合
  9. データ、ソフト資産相互利用、異機種間接続などのシステムのオープン化
  10. エンジニアリング環境の向上による計画、設計、プログラミングの省力化
  11. CIM(Computer Integrated Manufacturing)実現に向けたトータルコンピュータコントロール

 コンピュータコントロール制御システムの今後の傾向を考えると、フィードバック制御を中心とした連続制御の自動化は既に高度なレベルに達しており、今後は、連続、バッチプロセスにおけるスタートアップ、シャットダウン等非定常時操作の自動化、多品種少量時代に対応したバッチプロセスの銘柄管理や銘柄切替の自動化、搬送、仕分け等のディスクリートなプロセスの自動化等に対応したデータ処理やシーケンス制御の比重が高くなる。また、制御システムの統合化に伴い複雑化するオペレーションに対し、CRT表示の高機能化、高密度化や大画面化、さらには各種のオンライン支援機能、マルチメディアの活用などが大きく発展しつつある。従来、制御システムはプロセスを安全にかつ安定に制御する重要な役割を担うキーシステムの位置付けから、ハードウェア、ソフトウェアともに専用開発された。しかし、パソコンの処理能力の向上や価格の低下などインフォメーションテクノロジーの急速な進歩は制御システムにも大きな影響を及ぼし、さらに計測制御システムメーカ以外のソフトメーカから汎用OSをベースとしたSCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)などのパッケージソフトウェアのリリースもあり、新たな制御システムの選択肢が生まれている。現時点のこうした制御システムのヒューマンインタフェース部は、小スケール化したハードウェア上に、汎用OS、汎用ネットワークのオープンプラットフォームを持ち、そこにプロセス制御特有の環境をパッケージソフトウェアを利用し構築している。一方、コントロール部はメーカ独自のループコントローラやループ制御機能を持つプログラマブルコントローラを適用している例が多い。

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