1-1 発信器(検出器、変換器等)および検出指示等一体形計器

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1. はしがき

 本編では,発信器を測定変量ごとに分類して掲載してある.その区分は次のとおりである.

 1.1 温度計
 1.2 流量計
 1.3 圧力計
 1.4 レベル計
 1.5 プロセス用分析計
 1.6 その他の諸量計

 工業計器では,測定対象となる変量が非常に多いが,どんなプロセスにおいても共通的に測定され,かつその測定点数が多いのが,
温度,流量,圧力およびレベルである。本編では,まずこれらの代表的な4種類をとりあげて,それぞれ独立した分類とし,残りをプロセス用分析計とその他の諸量計に分けて掲載してある。

 プロセス用分析計は,気体または液体の成分,または成分にかかわる特性を測定するもので,連続自動計測が可能なものを対象として取り上げている。

 その他の諸量計は,上記5種類を除いた各種諸量を測定するもので,密度・比重,粘度,湿度などの主要なものを測定対象別に区分してある。

 マイクロプロセッサを搭載したスマート発信器またはインテリジェント発信器が普及してきた。その多くはある量を測定するとき複
合センサを用いて,付随する複数の測定変量を同時に測定しているが,ここでは,発信器の目的とする量に従って位置づけた。

 以下,測定対象または方式ごとの区分に従って製品を掲載するが,それらの測定原理や特徴などについては,
それぞれの冒頭に解説欄を設けて簡単にふれているので,それを参照されたい。

 従って本解説では,測定対象とは離れ,発信器などがもつ共通的な機能について簡単に述べ,製品を理解する一助に供したい。

2. 発信器の機能

 発信器は,プロセス変量を検出して伝送可能な信号を出すもので被検出量の種類に応じて,色々な測定法が利用されている。
また製品として形造られた各種の発信器が具備している機能も,単純なものから,複数の機能を備えたものまで,様々なものがある。

 本編に掲載されている個々の発信器は,製品名として検出器,変換器,発信器および伝送器など各種の呼称を採用している。
これらの用語にはそれぞれ,ある定義または特徴を意味するニュアンスが含まれてはいるものの,必ずしも明確な使用区分ができているとはいえないところがある。このため,製品名だけでその機能を把握することが難しい場合があるので,以下,簡単な機能区分をして説明したい。

 発信器を機能的に区分すると,次の3とおりが考えられる。

  1. 物理または化学的原理に基づき諸量の検出を行うが,得られる出力信号に特別な加工を施していないもの。
    この形式のものは,信号を加工するための機構や電気回路を有していないので,一般に簡単な構造のものが多い。
    例えば,熱電対や測温抵抗体,オリフィスなどがそれである。この場合,得られる出力信号が,そのままである程度の距離,伝達可能なものと,そうでないものとがあり,後者の場合は,伝送のための他の機器が必要となる。
  2. 諸量の検出を行い,生じる電気信号や機械変位に加工を施し,測定に便利な出力信号として取り出せるもの。
    この形式のものは,加工のための機構や電気回路を備えなければならず,構造的に幾分複雑となっている。例えば,サーミスタ
    利用の温度変換器,ストレンゲージ利用の圧力変換器のように,抵抗変化を電圧信号に変換し,同時に特性も補正してしまうも
    の等がそれに相当する。
  3. 2の場合と同じように,諸量の検出を行い,生じる信号または変位に加工を施し,伝送信号として取り出せるようにしたものであるが,その信号と値を4~20mA DC,20~100kPaの統一信号としているもの。
    加工のための電気回路や機構としては,統一信号に必要なエネルギーを得るため,電気または空気の増幅機能を有しているのが
    特徴である。例としては,電子式差圧発信器のように,オリフィスが発生した差圧をダイヤフラムで受け,その変位による電気
    変化を電気回路で増幅し,4~20mA DCの信号として取り出すものや,金属弾性体利用の圧力発信器のように,弾性体の機械的変位を受け,空気増幅機構を用いて20~100kPaの信号として取り出すものなどがある。

 以上,発信器を機能的に三つの種類に区分してみた。これらに対する呼称としては,(1)を検出器,(2)を変換器,(3)を発信
器と呼んでいるようである。英語では(1)がSENSOR,(2)がTRANSDUCER,(3)がTRANSMITTERとなる。ただし,明確な使
い分けは行われてなく,例えば,(3)の例として挙げた差圧発信器は差圧伝送器や差圧変換器とも呼ばれている。索引にあたっては,名称にとらわれず,その仕様をみて機能を判断していただきたい。

 なお,発信器と受信計双方にからんだ問題として,主な機能が同じでも,設置場所の違いで形や呼称が異なる場合がある。例として
起電力/電流変換器(温度変換器)があるが,現場に設置しmVを統一信号に変換して伝送する場合と,計器盤に設置しmVを受けて統一信号に変換するものとがある。しかし両者とも受信計への信号発信を主機能としているので,変換器の場所にこだわらずに本編に掲載した。

3. 伝送信号

 発信器の基本的な役割は,諸量を検出し,その値を信号に変換して受信計へ送ることである。工業計器の場合,伝送信号としては,電気信号と空気信号が主として用いられるが,電波や光信号を用いる場合もある。

 電気信号は,伝達や測定の容易さなどの理由で好んで用いられており,その種類は非常に多い。空気信号は,空気式調節計とその関連で開発されたもので,古くから広く用いられており,その種類は一種である。これらの信号の主なものを示すと次のとおりである。

【アナログ信号】
(1)統一信号といわれるもの
(a)電気信号 4~20mA DC, 1~5V DCなど。
(b)空気信号 20~100kPaなど。

(2)その他の信号
(a) 熱電対の直接出力のように,得られる信号が測定し易い直流電圧信号であり,そのまま利用できるもの,信号の値は測定範囲により異なる。
(b) 測温抵抗体の抵抗変化を直接測定するように,信号というよりは,被測定体が測定回路の一辺を構成して値を伝達するもの。
(c) 変換機能を内蔵し,小グループでやや標準化したもの。

 次のような比較的低レベルでの電気信号が用いられている。
0~10mA DC,0~20mA DC,10~50mA DC,0~1mA DC,0~5V DC,±10V DCなど,1mV/V,2mV/V,3mV/Vなど。

 統一信号はプロセス計装の高度化に伴い世界的に標準化されたもので,測定という機能よりは調節という機能に対応して開発された
信号といえる。調節計には古くからPIDの考え方が導入されていて,当初は空気圧が利用されており,その信号は早くから20~100kPaの1種に決められていた。その後電子化が進み,統一信号として,伝送機能と駆動力とを備えた4~20mA DCが国際規格として統一信号として規定された。

 その他の信号の性格は,測定に重きを置いた感があり,統一信号ほどの大きな加工は施されていない。

【ディジタル信号】
(1)電気信号
(2)光信号

 上記アナログ信号とは別に,ディジタル信号による伝送方式がある。これは,高度な性能をもち,ディジタル信号処理技術を採用した発信器が増加してきたため,具体化したものである。

 ただ,タービン式流量計など回転原理に基づく検出器で,電気のパルス列信号を発信する例もあるが,これらは測定原理上,得易い信号を利用したものといえる。

 光ファイバーケーブルを伝送路として,光パルスによるディジタル信号を伝送するものもある。ディジタル多重伝送,耐ノイズ性,安全性(防爆)などの特徴がある。

4. フィールドバス

 フィールドバスと呼ばれる通信規約が,普及しつつある。これは,2線式発信器,本質安全防爆という統一アナログ信号の特徴を継承しつつ,発信器や操作端などのフィールド機器との上位のディジタル計装制御システムとの間を結ぶディジタル通信技術である。

 狙いの一つは,サポート機器を拡大し適切なベンダーの選択を可能にするオープン化/マルチベンダー化である。マルチドロップ・ワイヤリングにより,配線を含む計装コストの低減情報量の増加、監視・制御機能の向上、自己診断の実現がはかられている。

 その標準化のため,国際的には,IECとISAが作業を進めてきた。フィールドバス協会が,国際的に統一された実装仕様の開発を行い,検証のための適合性試験と相互運用性試験を行っている。 

フィールドバスとは,IEC/ISAによれば「フィールドに設置されたフィールド機器と,計器室に設置された上位の制御機器との間を結ぶディジタル双方向通信路」と定義されている。IEC/ISAでは,リアルタイム性を確保するため,ISOのOSI 7層モデルの第3層から第6層まで省略した中抜き構造を採用し,物理層,データリング層,応用層およびユーザ層の構造としている。適合性試験と相互運用試験とに合格した機器は認定品として認知されて完全な互換性が保障されマルチベンダー化が実現されている。

 なお,フィールドバスの仕様は当工業会でJEMIS-038として定められている。

5. 検出指示等一体形計器

 諸量の検出を行うものの中には,前述の発信器の他に検出部分と表示部分とが一体になり,分離不能となっている計器がある。
これらは主として現場での運転管理用に供せられるもので,信号伝送用の機能を有してなく,呼称も圧力指示計などのように表示部の形式で呼ばれている。

 一体形計器の主なものとしては,圧力計,封入式温度計,差圧式流量計など,検出部に機械的機構を用いたものが多く,機械的変位
をレバー,リンク機構で拡大し,指針を振らせるようにしている。製品としては,指示機構が主体となって指示計としてまとめられた
ものが大部分であるが,記録機能や伝送機能などを付加し、記録調節計として或いは指示伝送計として小規模プロセスの調節や監視まで行っているものもある。

 次に,本編の1.5:プロセス用分析計や1.6:その他の諸量計の中に見られるものであるが,複数の機器を組み合わせて装置とし
てまとめてあるものがある。これらは検出のために,複雑なサンプリング装置が不可欠であったり,検出された値を一度データ処理し
て表示させる必要があったりするため,必要な機器(サンプリング装置,検出器,受信計など)をキュービクルなどにまとめ,装置と
して作り上げたものである。これらも分離不能な検出部をもったものと考え,本編に掲載してある。

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