5-2-7 全りん計測器及び全窒素計測器

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1. はしがき

 近年、わが国の公共用水域の水質汚濁の状況をみると、特に人口や産業が集中する内湾、内海、湖沼等の閉鎖性水域では、流入する汚濁負荷が大きい上に汚濁物質が蓄積しやすく、汚濁が生じやすい状況にある。さらに、窒素、りん等を含む物質が流入し、藻類その他の水生生物が増殖繁茂することに伴い、その水質が累進的に悪化するという富栄養化を伴う赤潮等の現象がみられる。
 これら水質汚濁進行に歯止めをかけるために、富栄養化の要因物質である、 りん(全りん:Total Phosphorus)、窒素(全窒素:Total Nitrogen)、に係る環境基準、さらに環境基準に対応した排出基準を設定し、平成13 年(2001 年)12 月に施行された第5 次水質総量規制では、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海の閉鎖性海域において、従来の化学的酸素要求量(COD)と併せて、りん、窒素が新たに監視・測定項目に追加された。
 全りん、全窒素の測定は、耐圧容器を用いて高温・高圧下で分解するオートクレーブ法、紫外線照射により酸化・分解を行う紫外線酸化法がある。分解したりん酸イオン、硝酸イオンは、それぞれ紫外線吸光光度法及びモリブデン青吸光光度法で検出し、全りん及び全窒素濃度を測定する。現在、1台で全りんと全窒素の2成分を同時連続測定する計測器が普及している。
 以下、全りん計測器及び全窒素計測器の測定方式、特徴について述べる。

2. 全りんの測定方式

 JIS K 0102「工場排水試験方法」では、「りん化合物及び全りん」に関して、「りん化合物は、ポリりん酸、動物質及び植物質中のりんなど、水中に存在するりん化合物中のりんを意味し、りん酸イオン、加水分解性りん、全りんに区別し、いずれもりん酸イオン(PO43- )として換算して表示する」としている。また、同上中の、全りんについては、「ペルオキソ二硫酸カリウム分解、硝酸-過塩素酸分解又は硝酸-硫酸分解によって試料中の有機物などを分解し、この溶液についてりん酸イオンを定量し、これを全りんとしてりんの濃度を表す」となっている。

2.1 オートクレーブ法

 オートクレーブ法は、試料に中性下でペルオキソ二硫酸カリウムを加えて高圧容器で120℃、30分加熱分解し、りん化合物をオルトりん酸に酸化し、モリブデン青吸光光度法で測定する方式となっている。図1 に、オートクレーブ法による全りん自動計測器の測定フロー例を示す。JIS K 0102「工場排水試験方法」に準拠した方式で、自動化の為に、試料水の前処理、吸光光度法による測定の制御、全りん濃度の演算表示など、マイコンで処理するなど工夫されている。特徴としては、手分析値と高い相関性が得られる。

オートクレーブ法による全りん自動計測器の測定フロー例

2.2 紫外線酸化法

 図2 は、紫外線酸化法による全りんの測定フローの例である。試料にペルオキソ二硫酸カリウム及び硫酸を加え, 紫外線照射すると、試料中のりん化合物が、りん酸イオンに分解される。りん酸イオンは、酸性下でモリブデン酸とアスコルビン酸と反応してモリブデン青が生成し,このモリブデン青の880 nm の吸収を測定して全りん濃度を求める。特徴としては、低温・常圧での分解のためメンテナンス性に優れている。

紫外線酸化法による全りん、全窒素自動計測器の測定フロー例

3. 全窒素の測定方式

 JIS K 0102「工場排水試験方法」では、「亜硝酸イオンと硝酸イオンに相当する窒素と、アンモニウムイオンと有機体窒素に相当する窒素とを求めて合計する総和法、又は、全窒素化合物を硝酸イオンに変えた後の紫外線吸光光度法、硫酸ヒドラジニウム還元法、銅・カドミウム還元法、もしくは熱分解法を適用する」としている。

3.1 オートクレーブ法

 図3 に、オートクレーブ法による全窒素自動計測器の測定フロー例を示す。全窒素の測定方式は、全りん計測方式とほぼ同じで、水酸化ナトリウムとペルオキソ二硫酸カリウムの混液を添加し、高圧容器で120 ℃、30 分間加熱分解し、窒素化合物を硝酸に酸化する方式を採用している。定量方式には、紫外吸光光度法が主に採用されている。他の方式として、硫酸ヒドラジン還元法、カドミウム・銅カラム還元法がある。特徴としては、全りん計測器と同様、手分析値と高い相関性が得られる。

オートクレーブ法による全窒素自動計測器の測定フロー例

3.2 紫外線酸化法

 図2 は、紫外線酸化法による全窒素の測定フローである。試料にペルオキソ二硫酸カリウム及び水酸化ナトリウムを加え, 紫外線照射すると、試料中の窒素化合物が、硝酸イオンに酸化分解される。分解した試料に硫酸を加えて、測定の妨害となる炭酸イオンを除去し, 硝酸イオンの220nm の紫外吸収を測定して全窒素を求める。特徴としては、全りん計測器と同様、低温・常圧での分解のためメンテナンス性に優れている。

3.3 化学発光法

 JIS K 0102「工場排水試験方法」の熱分解法を応用した「接触熱分解-化学発光法」による、全窒素自動計測器である。数μLの微量試料をキャリヤーガスで触媒を含む燃焼管に導入・分解させると、NO ガスが生成する。NO ガスは、冷却・除湿後、オゾンと反応させ、NO2 に酸化する際、発生する発光強度から全窒素を測定する。図4は、接触熱分解-化学発光法の測定フロー例を示す。この方式の特徴は、紫外吸光光度法で問題となる海水中の臭素などの妨害物質の影響を受けず、測定時間が短いということである。

接触熱分解-化学発光法の測定フロー例

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