6-2-1-8 γ線と物質との相互作用

 γ線(光子)は電磁波で、波としても作用するが、γ線やⅩ線ではエネルギーが高いので、粒子としての作用が顕著である。γ線と物質との相互作用を巨視的なスケールで見ると模式的には図2.1.8-1のようになる。平板状の物質に垂直に入射した光子は、一部は吸収され、また一部は散乱され方向とエネルギーが変化する。散乱や吸収は複合的に生ずるために、物質内での光子の分布は、エネルギー、方向ともにさまざまである。このような状況で、物質に対する、光子の性質を単純に表す指標の一つは、光子がその物質中を、全く相互作用を起こさずに通過できる確率である。

図2.1.8-1 巨視的に見た光子と物質との相互作用

 図2.1.8-2に仮想的に示したのは、物質中の厚さdⅩの薄い層を通過する光子である。層は薄いために、光子は内部で2回以上の散乱をしない。N個の光子がこの層に入射したとする。厚さdⅩの層内で、そのうちのいくつかの光子が何らかの相互作用を起こし、N′個の光子がそのまま通過したとする。相互作用を起こした光子数、N′-N(=-dN)は、層の厚さdⅩと入射した光子数に比例する。

  -dN=μ・NdⅩ  (2.5)

 ここでμは線減衰係数とよばれる比例定数で、相互作用しやすさの指標である。

図2.1.8-2 薄い層における光子の減衰

 始めに平板に入射した光子数をN0として次式が得られる。

  N=N0・e-μx  (2.6)

 相互作用を経験していない光子数は指数関数的に減衰する。μは物質と光子のエネルギーよって変化する。線減衰係数μを物質の密度ρで割った値μm=(μ/ρ)は質量減衰係数とよばれる。
 μmの原子番号Z依存性は、低エネルギー光子に対しては、Z4と大きく鉛のように原子番号の大きな物質が遮蔽に有効である。1MeVから3MeVの光子(60Coγ線が含まれる)ではあらゆる物質においてこのエネルギー領域の光子に対する質量減衰係数は、物質にほとんど依存しない。

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