3-5-2 ファンクションジェネレータ

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1. ファンクションジェネレータの特徴

 ファンクションジェネレータ(FG)は様々な電圧波形すなわち時間の関数(Function)を自在に発生(Generate)させることができる機器である。FGの特徴を以下に挙げる。

1) 周波数

 下は数μHz、上は数10MHz、数100MHzに及ぶ。熱反応、機械、生体、電力、オーディオ、光学、ロジック、ビデオ、通信などの様々な分野で利用することができる。周波数確度は数ppm前後あるので、ほとんどの場合、周波数カウンタなどを使って校正しなくとも十分正確な周波数信号が得られる。 

2) 振幅

 下はmVから上は一般に±10V、ものによっては±数10Vの製品もある。またDCオフセットを加算できるものが多い。

3) 波形

 正弦波、方形波はもちろんのこと、三角波、パルス波、ノイズ、さらには多くの製品が任意波も出力できる。

4) 発振形態

 連続発振だけでなく、外部から入力されたトリガ信号に同期して発振できることが大きな特徴である。この同期発振機能は、トリガ発振からゲート発振などのバースト発振に拡張されてFGの応用範囲を大きく広げている。また、周波数や振幅、波形の変化パターンを予めプログラムしておき順次出力するようなシーケンス発振機能を備えるものもある。

5) 変調

 変調機能を有するものもあり、FM(周波数変調)、AM(振幅変調)、PM(位相変調)、FSK(周波数の2値変調)、PSK(位相の2値変調)、さらに方形波に対してPWM(パルス幅変調)などを行うことができる。

6) 複数チャネルの連動

 2チャネル分の発振器を内蔵した製品では、同一の周波数を出力して、チャネル間の位相を変えたり、周波数比を一定に保ったり、周波数差を一定に保ったり、差動出力もできる。

このように、FGは非常にバリエーションの豊富な波形を出力することができる。

2. ディジタル方式のファンクションジェネレータ

 FGの内部はアナログ回路で構成されていた時代もあったが、現在ではほとんどがDDS(Direct Digital Synthesizer:ディジタル直接合成)と呼ばれるディジタル方式のものに置き換わっている。DDSの原理を図1に示す。DDSは周波数確度が高く分解能も極めて高くできるほか、周波数の変更や発振の開始/停止などにおいても位相の連続性が保たれる。広範囲な周波数スイープなども可能で、また波形メモリに書き込む波形データを変更することによってオリジナルの波形(任意波)も出力できるといった特徴がある。

図1 DDSの原理

 DDSは波形ROM、位相アキュムレータ(加算器とラッチ)およびD/Aコンバータで構成される。アキュムレータはクロックに同期して周波数設定値[N]ずつ加算していくことで設定周波数値に比例した速度で増大するディジタルデータを出力する。このデータは出力位相に相当し、波形ROMの読み出しアドレスになる。ROMの出力をD/Aコンバータでアナログに変換すれば設定した周波数・波形のアナログ信号が得られる。

 またDDSは次の要素の影響を受ける。

1) 周波数分解能

 位相アキュムレータのサイズ(加算ビット長)とクロック周波数で決まる。クロック周波数が同じなら、位相アキュムレータのサイズが長いほど、細かい周波数分解能が得られる。

2) 最高周波数

 連続発振の正弦波の場合、実用的にクロック周波数の1/3~1/4程度が上限である。

3) 出力周波数の確度

 クロック周波数確度で決まる。一般にはクロック源として水晶発振器が用いられ、周波数確度は数ppm前後である。

4) 出力波形の品質

 出力波形の品質は波形ROMのアドレスビット数、波形ROMのデータビット数(D/Aコンバータのビット数に等しい)で決まる。もちろんD/Aコンバータ自身の直線性や最終出力に至るアナログ系の性能の影響も受ける。現実に使用できる波形メモリやD/Aコンバータの都合により位相アキュムレータのサイズをいくら大きくしても最終的に利用できるのはその上位10数ビットに限定される。一般にはD/Aコンバータには12から16ビットのものが使用される。一方、機能面から見るとDDSには次のような利便性がある。それは波形メモリの波形データを変更すれば別の波形を出力できるということである。波形メモリに三角波データが書かれていれば、三角波が出力される。図1では波形メモリを波形ROMとして示したが、これを波形RAMとして任意の波形データに書き換えれば、任意波(ARB)発生器になる。

3. 任意波

 正弦波や方形波と異なり、ユーザが目的に合わせて独自に作成する波形が任意波である。任意波は数式的に作成したり、ディジタルオシロスコープで捉えた実際の波形データをそのまま使う場合もある。

 現代のFGは任意波発生器と一体のものであると言える。それは発振方式がDDSで構成されていることが大きな要因である。DDSはその構成上、そのまま任意波発生器になるが、一方で「簡易任意波発生器」と呼ばれることがある。

 例えばクロック周波数が100MHz、波形メモリが1MワードのDDSがあるとする。クロック周波数は出力周波数とは無関係に一定である。したがって、クロック周波数の1/1000である100kHz を出力するときは、1周期あたり1000ポイントということになる。同様に1MHzを出力するときは100ポイントということになる。これは正弦波を出力する場合も任意波を出力する場合も同じである。つまり、波形メモリのデータが間引かれて出力されるわけである。それでは1Mワードがすべて出力される周波数はいくつになるか。それは100MHz÷1Mワード=100Hz以下ということになる。

 このようにDDSの任意波はクロック周波数が一定であるため、その更新頻度で再現できるような任意波形状でなければならない。1サンプルごとに細かく変化する複雑な任意波を作成しても、それがその通り1サンプルも漏らさずに出力できる周波数は限られている。このように制約はあるが、DDS方式の任意波がポピュラーなのは、変調もスイープもトリガ発振も正弦波などと区別なく使用できる利便性の高さに因るものである。実際、多くの用途で問題なくDDS方式のFGが任意波発生器として活用されている。

 一方、波形メモリのデータをひとつも漏らさず出力できる任意波発生器は「真の任意波発生器」と呼ばれることがある。真の任意波発生器では、波形メモリの読み出しクロック周波数を変えて出力周波数を変化させる。しかしこの方式では、出力周波数=クロック周波数÷任意波データ数 という制約に縛られるので、DDSのような使い勝手の良さはない。出力周波数を必ずしも希望の値に設定できないため変調やスイープも制約される。ファンクションジェネレータの中には任意波を他の波形と区別し、真の任意波発生器の機能を持たせるものもある。

4.バースト発振

 バースト発振機能について説明する。バースト発振はDDS方式のFGに搭載されることが多い機能である。外部信号により指定した発振の開始/停止を制御することができる。単に発振開始/停止を制御するだけでなく指定した位相での発振開始/停止を行う。

1) トリガ/バースト発振

 トリガに同期して指定の周期数、指定の開始/停止位相で発振を行う。トリガからの遅延時間も設定できる製品もある(通常、数100nsの定常遅延がある)。一般に1周期だけの発振の場合をトリガ発振、複数周期の発振の場合をバースト発振と呼ぶ。トリガ信号を受けて発振開始してから停止位相で発振を停止するまでの間は新しいトリガを受け付けない。

図2 バースト発振の例

2) ゲート発振

 ゲート信号がオンの間、整数周期の発振を指定の開始/停止位相にて行う。ゲート信号がオフになっても直ちに発振は停止せず、指定の位相になってから発振を停止する。

図3 ゲート発振の例

5. FGを扱う上での注意点 

 使用条件、測定条件などによっては、設定とは異なる信号が出力されているかのように誤解することがある。例えば出力電圧を50Ω負荷で1Vp-pに設定した場合、入力インピーダンスが高い回路に接続したときの出力は1Vp-p ではなく2Vp-pになる(FGの出力インピーダンスは通常50Ωである)。

 また正弦波出力の場合、1Vp-pは実効値で0.35Vrms(=Vp-p値/2√2)になるが、正弦波以外ではこの関係は成立しない。なおDCオフセットを加える場合は波形のピークにDCオフセットを加算した値がそのFGの最大出力可能電圧を超える設定はできない。正弦波以外では波形に多くの高調波成分が含まれるので波形確認の際には測定器の周波数帯域が高調波をカバーすることを確認することが必要である。周波数帯域が不足していると実際に出力されている波形が鈍ったりゆがんでいるように見えてしまう。周波数が高い場合はインピーダンスマッチングも必須である。その際の終端は負荷端で行う。一方、低周波の方形波などを観測する際にうっかりオシロスコープをACカップリングにすると入力の位相回転によって波形にサグ(平坦部が斜めになる)が出てしまう。

 また一般にFGの仕様上、出力電流をたくさん取ることはできない。大きい電圧・電流が必要な場合には、電圧・電流を増幅させるための増幅器(アンプ)とFGを組み合わせて使用する。

 このような注意点を知っておくことで、使用や測定における誤りを防ぐことに役立つ。

図4 負荷インピーダンス50Ωまたは開放時の電圧

以上

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