3-5-1 低周波発振器(VLF/LF/MF 3 MHz未満)

 正弦波発振器として、最初にできたのは LC 発振器である。低周波での LC 発振器の設計・製作が困難なため、その後に RC 発振器が開発された。

 市販されている低周波の正弦波発振器は、そのほとんどが RC 発振器で、主にオーディオ関連の試験に用いられている。周波数の安定度や確度は良くないが、正弦波のひずみ特性が非常に良いものがある。
 製品の周波数範囲は、オーディオ帯よりも一けた以上広いが、中には 2 Hz ~ 20 MHz という短波帯を含む超広帯域のものもある。

1 RC 発振器の分類と特長

 RC発振器の基本形は、RC パッシブ BPF(Bandpass filter)又は BEF(Band elimination filter)を利用した選択度:Q が無限大(通過周波数帯域幅が無限小)の BPF である。
 現在、実用化されている RC 発振器には、ウイーンブリッジ形、ブリッジドT形、状態変数形( State Variable )などがある。

1.1 ウイーンブリッジ形 RC 発振器

 RC の辺(周波数設定回路)と、純抵抗の辺(振幅制御回路)をもつウイーンブリッジ回路( BPF 特性)で構成された発振回路。基本回路を図 1 に示す。二つの Rf とCf はそれぞれ同じ値として発振条件を計算した。

 この回路を書き換えた図 2 を見ると、ブリッジを構成していることがよく分かる。
 この発振器の特長は、

  • アンプが 1 個でよい。
  • 周波数を連続可変にするとき、バリコンが使える。

1.2 ブリッジド T 形 RC 発振器

 RC の辺(周波数設定回路)と、純抵抗の辺(振幅制御回路)をもつブリッジド T 回路( BEF 特性)で構成された発振回路。基本回路を図 3 に示す。二つの Rf は同じ値とし、二つのキャパシタは 4 倍の比として発振条件を計算した。

 この発振器の特長は、

  • アンプが 1 個でよい。
  • 高い周波数まで動作する。
  • ウイーンブリッジ形より低ひずみ。

1.3 状態変数形RC発振器

 状態変数形フィルタを応用した発振器。基本回路を図 4 に示す。二つの Rf とCf はそれぞれ同じ値とし、三つの R も同じとして発振条件を計算した。
 状態変数形フィルタは、素子感度が小さい(フィルタの動作が、各素子の誤差による影響を受ける割合が小さい)ため、選択度:Q の大きな BPF を安定に作ることができる。このため、ひずみ率がウイーンブリッジ形に比べて 1/10 ~ 1/100 の発振器が容易に作れる。また、90 度位相差の出力が正確に得られのも大きな特長である。
 この発振器の特長は、

  • 超低ひずみ率
  • 二相出力が得られる。

2 周波数可変素子

2.1 周波数連続可変

 周波数を連続可変とするには、周波数の 1 ディケード間をバリコンか可変抵抗器で変化させ、レンジ間は固定抵抗又はキャパシタを使用する。

  • バリコンは、現在ではポリバリコンが主流で、容量も小さい。以前は、430 pF 以上のエアバリコンを使ったウイーンブリッジ発振器が多く見られた。
    バリコンの場合、周波数ダイヤル目盛りが対数的になり、読みとりやすくなる。
  • 変化特性が直線の可変抵抗器は、精度のよいものは巻線タイプであった。このため、高い周波数では使用できない。また、変化特性が直線のため、周波数ダイヤル円板の高い周波数の方が詰まった目盛りとなり、使いにくい。

2.2 周波数ステップ可変

 連続可変ではなく、1 ディケード間をロータリスイッチで数けた設定とした発振器もある。
 周波数レンジ切換にはキャパシタを用い、レンジ内は固定抵抗器を切り換えると、精度よく、かつ、安価に周波数を設定できる。微調整用の可変抵抗器を付ければ、連続可変にもできる。

3 振幅制御回路

 RC 発振器は、正帰還量と負帰還量とのバランスが取れたところで振幅一定の正弦波の発振が持続する。このため、振幅制御回路は、発振器の心臓部である。

3.1 電球又はサーミスタによる振幅制御

 以前は、図 1 の振幅制御素子 R3 又は R4 を、電球やサーミスタにして振幅を制御していた。電球やサーミスタは、周囲温度によって抵抗値が変化するため、印加電圧に応じて自身の発熱量が変化し、抵抗値が変化する。このため、発振器の出力電圧が変化しようとすると、電球又はサーミスタの抵抗値が変化し、帰還量を自動的に制御することができる。
 簡単な回路で済むのがよい点であるが、周囲温度の影響を受けやすく、熱時定数が大きいため、低い周波数では使えない。最近の RC 発振器は、電子的な振幅制御回路を用いているものがほとんどである。

3.2 電子回路による振幅制御

 電子的振幅制御回路のブロック図を図 7 に示す。
 発振器の出力である Vout を振幅検出回路( Amplitude Detector )で直流電圧に変換し、基準電圧( Vref )と比較して誤差増幅器( Error Amplifier )で増幅して電圧制御可変抵抗器( VCR )に加える。誤差増幅器は積分器を兼ねており、振幅検出回路のリプル低減に寄与する。

 VCR( Votage Controlled Resistor )は、電圧で抵抗値を制御できる素子である。代表的なものに、CdS ホトカプラや FET 、アナログ掛算器などがある。
 VCR の R3 又はR4 は、図 1 ~ 4 の R3 又は R4 のいずれかである。
 図 1 のウイーンブリッジ形 RC 発振器に図 7 の振幅制御回路を付加した例を図 8 に示す。

3.3 ひずみ

 RC 発振器の主なひずみ発生原因は、振幅制御回路である。これに比べれば、オペアンプのひずみは無視できる。
 振幅制御回路のひずみ要因は、振幅検出回路の直流リプルと VCR のひずみである。
 このリプル成分は、発振周波数の高調波成分をもっているため、VCR がその高調波に応答してひずみ成分となる。

a) 振幅検出回路
 全波整流回路、ピークホールド回路、サンプルホールド回路などがある。低周波でのリプルを小さくするには、サンプルホールド回路が有利である。図 4 の状態変数形回路では、二相出力が得られるので、容易にサンプルパルスを作ることができる。
 高周波では、全波整流回路でもピークホールド回路でも十分にリプルの小さい直流電圧が得られる。

b) VCR
 FET は二次ひずみを発生するので、FET に印加される信号電圧は小さくしなければならない。そのためには、周波数設定素子の精度が、周波数を可変しても保たれている必要がある。エアバリコンを使用した周波数連続可変形は、精度が低い(素子のトラッキング誤差が大きい)ため、VCR の可変範囲を広くしなければならない。その結果として、FET には大きな信号電圧が加わり、ひずみとなる。
 低ひずみ率発振器には、CdS ホトカプラやアナログ掛算器が適している。

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