5-3 騒音・振動計測器

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5-3-1 騒音計

1. はしがき

 物が振動したり、空気の渦ができたりすると、周囲の大気圧が変動し、音波が発生する。その音波が耳の聴神経で信号に変換され脳の知覚域に達すると、音として認識される。
  騒音は、不快な又は望ましくない音、その他の妨害と定義される(JIS Z 8106「 音響用語」)。騒音は主観的に判断されるので、騒音計で測定した値が小さくても、その音を聞く者にとっては騒音であることもある。
  音波の存在するときの大気圧から静圧を減じた値を音圧と呼び、パスカル(Pa)で表す。人間が知覚できる音圧の範囲は、1 kHz で にわたる。このように最小値と最大値の比が1000 万倍に及ぶ数字をそのまま表すことは不便であること, 人間の感覚は対数に比例する(ウェブナーフェヒナーの法則)ことから、通常、次式で求める音圧レベル (又は騒音レベル)で評価する。音圧レベルは、デシベル(dB)で表す。

ここに、 は音圧(Pa)、 は音圧の基準値(2 ×10-5 Pa)である。
  図1 は、音圧と音圧レベルを対比したもので、実際の環境音がどのような値であるかをこれに当てはめ、図で表したものである。

 一方、人間の耳の感度は周波数によって異なり、同じ音圧の音でも周波数が異なると大きさが違って感じられる。騒音計は、この人間の感覚に近い評価ができるような周波数重み付け特性を備えており、周波数重み付け特性A で測定した音圧レベルを、騒音レベルと呼ぶ。
 騒音計は、計量法に定める法定計量器で、普通騒音計と精密騒音計の2種類があり、取引証明に使用する際には、検定に合格した計量器を使用しなければならないという使用上の制限を受ける。
 平成17 年(2005 年)、騒音計の規格が国際規格(IEC61672 シリーズ)に整合化させるための改正により、JISC 1509 シリーズ「電気音響 - サウンドレベルメータ(騒音計)」が制定され、JIS C 1502「普通騒音計」及びJIS C1505「精密騒音計」は廃止された。普通騒音計はJIS C1509 のクラス2 の騒音計に、精密騒音計はクラス1 の騒音計に対応している。

2.騒音計の構造と構成

 騒音計の構成は図2 の通り、マイクロホン、周波数重み付け特性、騒音レベル演算部、及び指示器などから構成される。

 マイクロホンは騒音計のセンサ部分であり、音圧に比例した電気信号を出力する。一般に騒音計に使用されるマイクロホンは、周波数特性が平坦であり、安定性に優れたコンデンサマイクロホンである。コンデンサマイクロホンは、図3 に示すように、振動膜( 可動電極)と平行に背極( 固定電極)を配置し、その間にバイアス電圧(偏極電圧)を印加することによって、静電容量の変化に比例した電気信号出力を得る構造となっている。最近の騒音計では、バイアス電圧を必要としないエレクトレットコンデンサマイクロホンが主流である。

 騒音計には、通常、図4 に示すようなA 特性、C 特性、Z (FLAT) 特性の周波数重み付け特性が備えられている。

 A 特性は、40 phon の等ラウドネス曲線 ( 耳の等感度曲線) の逆特性を近似しており、一般の騒音の評価にはA 特性を用いる。C 特性は、85 phon の等ラウドネス曲線の逆特性を近似しており, 31.5 Hz ~ 8 kHz(3 dB 低下する周波数)で、平坦な周波数特性をしている。Z(FLAT)特性は、10 Hz ~ 20 kHz までの設計目標が平坦な特性である。一般に、周波数分析を行う場合には、周波数重み付け特性は、C 又はZ(FLAT)特性を用いる。
 騒音レベル演算部では、周波数重み付けした音圧信号を2 乗して平均し、常用対数を演算してデシベル値に変換する。平均には、時間重み付け特性をかける方法(騒音レベル)と測定時間全体にわたって時間平均する方法(等価騒音レベル)の2 種類がある。時間重み付け特性は、F(fast)特性とS(slow)特性が規定されている。時間重み付け特性は、1 次のローパスフィルタで実現でき、その時定数で表すと、F 特性は125 ms、S 特性は1 s である。トーンバースト信号を入力したときの、騒音レベルの変化の様子を図5 に示す。

 環境基準や騒音規制法では、対象となる騒音によって、評価量として騒音レベル (F 特性又はS 特性) や等価騒音レベルが使い分けられているので、規定にしたがった設定にして測定を行う。


 

5-3-2 振動レベル計

1. はしがき

 振動は各種公害の中で騒音と合わせて論議され、日常生活にもっとも関係の深い公害問題としてとりあげられている。それは工場の機械の大型化、交通機関の大型化・スピード化及び建設工事機械類の大型化などにともなって生じて来た現象であり、振動の大きさの増大とともに、それらが波及する一般生活者の範囲も大きく広がって来ているためである。
 このような背景から、昭和51 年(1976 年)に振動規制法が施行され、振動の発生を規制し、地域や時間を指定して許容される最大の振動レベルを定めている。また同時に振動レベル測定のための振動レベル計の性能も規定し、JIS C 1510 「振動レベル計」 に示す性能以上のものとし、正しい計測と判定が行なわれるようにしている。なお、振動レベルの単位に関しては、計量法で定められており、単純な振動加速度を示すのでなく、人体の全身を対象とした振動の評価尺度として定められている。

2. 振動レベル

 公害振動を評価する場合、騒音と同様、次式で求める振動加速度レベル (又は振動レベル)で評価する。

 ここに、 は振動加速度(m/s2)、 は基準の振動加速度(10-5 m/s2)である。
一般に振動が人体におよぼす影響は、振幅と周波数によるとともに、鉛直と水平の振動では人の感じ方が異なる。そこで、騒音と同様、振動加速度に対しても人間の感覚を近似した周波数重み付け特性 ( 振動感覚補正) をかけて評価を行う。周波数重み付けをして測定した振動加速度レベルを、振動レベルと呼ぶ。図6 に鉛直方向と水平方向の周波数重み付け特性を示す。

 振動レベル計も騒音計と同様、計量法に定める法定計量器であり、取引証明に使用する際には、検定に合格した計量器を使用しなければならないという使用上の制限を受ける。
 なお、国際規格(ISO 1683)では、推奨する基準の振動加速度の値を10-6 m/s2 と規定している。この値を基準とすると、振動加速度レベルの値は20 dB 大きくなる。外国において振動(加速度)レベルの値を示す場合には、基準の振動加速度レベルの値を明記して表すことが望ましい。

3. 振動レベル計の構造と構成

 振動レベル計の構成は、図7 の通り、加速度ピックアップ、周波数重み付け特性、振動レベル演算部及び指示器などから構成される。

 加速度ピックアップは振動レベル計のセンサ部分であり、振動加速度に比例した電気信号を出力する。一般に振動レベル計に使用される加速度ピックアップは、堅牢で高感度な圧電型振動ピックアップである。圧電型振動ピックアップは、図8 に示すように、圧電素子を本体と重錘(ウェイト)で挟み込む構造となっており、振動加速度と重錘の質量の積で決まる力が圧電素子に加わり, その力に比例した電気信号出力を得ることができる。

 振動レベル計には、通常、図6 に示した鉛直方向及び水平方向の周波数重み付け特性と平坦特性が備えられている。振動規制法に基づく評価では、鉛直方向の周波数重み付け特性を用いる。平坦特性は、振動加速度レベルを求める場合や周波数分析を行う場合に用いる。
 振動レベル演算部では、騒音計の騒音レベル演算部同様、 周波数重み付けした音圧信号を2 乗して平均し、常用対数を演算してデシベル値に変換する。振動レベルの場合、平均は時間重み付け特性をかけて行う。
 振動レベル計の時間重み付け特性は、1種類で、ローパスフィルタの時定数で表すと、0.63 s である。


 

5-3-3 そ の 他

1. はしがき

 騒音や振動の測定は、それぞれ、騒音計や振動レベル計を用いて行う。これらの計測器と共に、騒音レベルや振動レベルを現場で紙に記録するレベルレコーダや周波数分析を行う周波数分析器を併用することが多い。

2. レベルレコーダ

 騒音レベルや振動レベルを紙に記録することにより、時々刻々と変動する様子を現場で容易に把握することができ、測定が正しく行われているかどうかを確認することもできる。
 通常、図9 のように騒音計又は振動レベル計の交流出力信号をレベルレコーダに入力して使用する。

 レベルレコーダには周波数重み付け特性は備えていないので、騒音レベル(A 特性など)や振動レベル(鉛直特性など)の周波数重み付け特性の設定は、騒音計又は振動レベル計側で行う。機種によっては、周波数重み付け特性の設定に関わらず、周波数重み付けのかかっていない信号が出力されるものがあるので注意が必要である。騒音レベル(F 特性、S 特性)や振動レベル(時定数0.63 s)の時間重み付け特性の設定は、レベルレコーダ側で行う。振動レベルの周波数重み付け特性は、通常、VL と表記されていることが多い。
 レベルレコーダの記録から騒音レベル又は振動レベルを読み取るためにレベルレコーダの感度の調整が必要である。騒音計又は振動レベル計を電気信号で感度を確認する設定にし(通常、cal と表示されている)、レベルレコーダのペンの位置が、騒音計の場合にはフルスケールより6 dB 低いレベル、振動レベルの場合にはフルスケールのレベルとなるようにレベルレコーダの感度を調整する。一般に、レベルレコーダの記録用紙は50 dB の範囲を記録できるものが使われる。紙送り速度は、測定の目的に応じて設定する。
 レベルレコーダの性能は、JIS C 1512「騒音レベル、振動レベル記録用レベルレコーダ」に規定されている。

3. 周波数分析器

 騒音や振動の周波数成分を知ることにより、騒音や振動の問題に対して有効な対策を施すことができる。
  周波数分析は、一定の周波数幅の帯域に含まれる音や振動のパワーを求める定幅型の分析(例えばFFT 分析)と帯域の上限周波数と下限周波数の比が一定となるようにしてパワーを求める定比型の分析(例えばオクターブバンド分析)に大別することができる。人間の感覚は、周波数領域においても対数に比例しているため、環境騒音や環境振動の周波数分析には、通常、定比型のオクターブバンド(又は1/3 オクターブバンド)分析が用いられる。オクターブバンド及び1/3 オクターブバンドの中心周波数(Hz)は、次の式で求められる。

 ここに、 はオクターブ比(= 103/10)、 は任意の整数、 はバンドを示す整数 ( オクターブバンドの場合1, 1/3オクターブバンドの場合3)、 は基準の周波数(=1kHz)である。100 Hz から10 kHz におけるオクターブバンド及び1/3 オクターブバンドの中心周波数を表1 に示す。厳密な周波数は有効数字5 桁で丸めてある。
  フィルタの通過帯域の下限周波数 及び上限周波数は次の式で求められる。

 騒音や振動の測定に用いられる周波数分析器の性能は、JIS C 1513「音響・振動用オクターブ及び1/3 オクターブバンド分析器」に規定されており、分析器に使用されるフィルタの性能は、JIS C 1514「オクターブ及び1/N オクターブバンドフィルタ」に規定されている。

 周波数分析器の形態は、一つの筐体に納められた専用のものから、 騒音計に周波数分析機能を組み込んだもの、メモリカードを利用して騒音計(又は振動レベル計)に周波数分析機能をインストールするもの、パーソナルコンピュータを利用するものなど様々である。周波数分析器による騒音のオクターブバンド分析例を図10 に示す。

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