1-5-1 計装パネル、操作盤

 プロセスの運転は、プロセスの諸条件を常時把握しながら行わなければならない。その際、諸条件を把握する手段として工業計器が用いられているが、数多くの工業計器をいかに有効に運転員の監視下に置くかが重要な課題となる。この問題の解決のため、計器の形状や機能の改善が図られると同時に、それを装架する計装パネルや操作盤が工夫され、その機能の充実が図られてきている。その開発、改良は製造工場の近代化と相俟って、行われてきているので、以下に歴史的変遷としてふれ、次にその代表的な種類について述べることとする。

1.1 計装パネルの歴史的変遷

1950年中期まで‥‥
 少数の大形計器を取り付けたパネルが装置の近くに設置された時代である。装置は直接人力で操作される構造のもので、電気または空気圧等による遠隔操作は考慮されていなかった。

1950年後期~1960年初期‥‥
 工場が連続プロセスを採用するようになり、大幅に自動制御を必要とするようになった。バッチプロセス主体の時期に比較すると、監視範囲が広がり、必要な計器数も増加した。そのため集中管理に便利なよう計器の小形化が行われ、前面部が(150mm×150mm)角程度の小形計器が開発された。同時に、計器運転に便利なように、パネル面にプロセスのフローシートを単純化して描き、計測箇所に計器をはめこんだグラフィックパネルが導入された時代である。

1960年中期~後期‥‥
 製造プロセスが大形となり、所要計器が著増した。より多数の計器の運転管理のためや経済的理由から、一層の小形計器(75mm×150mm程度)が開発され、計器を密着して取りつける。いわゆる高密度計装が始まり、フローシートをパネル上部に小さく表示するセミグラフィックパネルが導入されてきた。一方、シーケンス制御等の制御回路がパネルに同居するようになり、従来呼ばれていた"計器"パネルの域を脱し、"計装"パネルという表現が使われ始めた。

1970年代‥‥
 60年代後半の高密度計装パネルが使われると同時に、高度な計装に対応するため、受信計そのものが入力部、変換部、演算部、表示部等の機能別機器に分解され、それらの組み合せによって複雑な計装に応えられるようになった。パネルは、表示機器や操作器のみ表面に装架し、他の入力、変換、演算等の諸機器はパネル背部のラックに集約して取り付けられる。そのため、パネルは従来の計器を集合する盤の域を脱し、表面のパネル、背部のラック部が一体化され、機能的に一つの大きな制御装置と見なされるまで発展してきている。

1980年代以降‥‥
 70年代後半に、マイクロコンピュータ応用のディジタル計装システムが開発され、80年代に入るとともにシングルループディジタルコントローラが広く使用されるようになってきた。計装パネルも変貌を遂げ、CRT等を利用し、プラント規模に応じた最も人間工学的に運転しやすい監視制御システムが導入され、従来の計装パネルはローカル部分やCRTを中心としたオペレータズコンソールのバックアップ用等として使用されている。また、従来のパネルの代わりに、大形の高精細度ディスプレイを設置し、プロセス用監視制御システムの画面やITV(Industrial TV)の画像を表示しているケースも多い。

1.2 計装パネル・操作盤等の形状

 計装パネルはその用途により、いろいろな形状のものが作られているが、その主なものを示すと、図5.1のとおりである。ただし、図中に示す呼称については、必ずしも世の中で統一して使われているとはいえないものも含まれているので、ご了承戴きたい。

計装パネルの種類

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