4.2.1 厚さ計

厚さ計は、放射線が物質を透過する際、吸収・散乱で減衰する性質を利用し、被測定体の厚さを非接触で測定する装置です。使用される線源核種は、その目的や用途によって異なるが、一般的に金属製品を測定する厚さ計には137Cs、または241Amのような透過力の強いγ線源が用いられ、検出器には電離箱、もしくはプラスチックシンチレーション検出器が用いられる。紙・プラスチック等の測定には、85Krまたは147Pmのような弱いエネルギーのβ線源が用いられ、検出器には電離箱が用いられる。また、ゴムや比較的厚いプラスチックシートの測定には、90Srのような高いエネルギーのβ線源が利用されている。
 主な応用例としては次のようなものがあり、極めて多岐にわたっている。
  • 1) 冷間圧延金属板の厚さ測定          ・・・・・・・ 鉄鋼業、非鉄金属業等
  • 2) 熱間圧延の板厚測定             ・・・・・・・ 鉄鋼業
  • 3) 製紙工程における紙の坪量(1㎡当りの質量)測定 ・・・・・ 紙、パルプ工業
  • 4) プラスチックフィルム、セロファン等のシートの厚さ測定 ・・ 化学工業
  • 5) ゴムシートの厚さ測定            ・・・・・・・ ゴム、タイヤ工業
  • 6) 金属板のメッキ層の厚さ測定         ・・・・・・・ 鉄鋼業
  • 7) 建築材料用合板の厚さ測定          ・・・・・・・ 建材業

 これらの産業分野において厚さ計を使用することの重要性は非常に高くなっている。紙パルプ業界での代表的なB/M計(坪量計と水分率の測定装置)は、製紙装置の一部になっており、品質面はもちろんのこと、操業面でも不可欠なものとなっている。また、鉄鋼業等においても製品の厚さむらによって受ける経済的損失は、製紙業界の場合よりもはるかに大きいものとされており、厚さ計が担う役割はより重要である。
 表4.2.1-1に主な厚さ計の線源と測定用途を示す。
表4.2.1-1主な厚さ計用線源と測定範囲
線源測定坪量値(厚さ)の範囲主な測定用途
147Pm(β線) 5~100g/㎡(5~100μm) *1 新聞紙、上質紙、コート紙、 プラスチックフィルム、磁気テープ、ラップ
85Kr(β線) 10~1200g/㎡(10~1200μm) *1 上質紙、コート紙、クラフト紙、板紙、プラスチックシート
204Tl(β線) 15~1500g/㎡ プラスチックシート
90Sr(β線) 100~5000g/㎡(0.1~5㎜) *1 板紙、プラスチックシート、ゴム板、 金属箔、建築材、ガラエポ樹脂、 不織布
241Am(γ線) 0~40kg/㎡(0~5㎜) 銅板、鋼板、アルミ板
137Cs(γ線) 20~500kg/㎡(4~100㎜) 銅板、H形鋼、シームレスパイプ
*1 カッコ内の数値は、測定対象の材質の密度が、1.0の場合における厚さ
(1) β線厚さ計
 β線厚さ計は、β線源から照射されたβ線が、被測定物の厚さに応じて滅衰する性質を利用して被測定物の厚さを測定する装置で、紙や、数ミリ以下の比較的薄いフィルムやシートなどの厚さ測定に多く使用される。被測定物の厚さ範囲に応じて、147Pm、85Kr、90Srのβ線源が多く使用されている。
 図4.2.1-1に紙の坪量値(単位面積重量)を測定するβ線厚さ計の基本的な構成を示す。β線厚さ計は、滅哀したβ線の強さを検出する電離箱、電離電流を増幅するプリアンプ、厚さ信号を工業単位(厚さ、または坪量値)に変換する演算部で構成されている。紙のように薄い材料の厚さを正確に測定するためには、測定ギャップ(線源と検出器との空気層)中における温度変化により密度が変化する空気の影響を無視することはできないため、厚さ測定中は温度補償したり、恒温化したエアで測定ギャッブを満たすなどの工夫をしている。図4.2.1-2にβ線厚さ計を示す。
図4.2.1-1 β線厚さ計の基本構成
図4.2.1-2 β線厚さ計
 β線厚さ計の検出器と線源部は、被測定物を挟んだ位置にフレームと呼ばれる支持装置に固定され、被測定物の幅方向に走行しながら厚さを測定する。フレームの種類は、O型フレーム(図4.2.1-3)が一般的だが、狭い幅の被測定物の厚さを測定するC型フレーム(図4.2.1‐4)もある。
図4.2.1-3 O型フレーム
図4.2.1-4 C型フレーム
 紙パルプ業界の抄紙プロセスで使用される厚さ計は、紙の坪量(単位面積重量)を測ると同時に紙に含まれる水分量や、灰分量、表面の色などを測定するセンサなどと組み合わせて使用されるのが一般的で、B/M計(坪量/水分計:Basis Weight and Moisture Sensor)という名称で広く使用されている。B/M計は、オンラインで抄紙状態を測定すると同時に、オンライン情報を使用して抄紙プロセスの制御も行っている。
 製紙工程では、紙の色を白色にし、印刷適性を改善する目的で、石灰を主成分とした塗工液を紙の表面に塗工することがあり、製紙向け厚さ計の応用として、塗工量を測定するカルシウム計がある。55Feのβ線を紙に照射して、紙に塗工した石灰中に含まれるカルシウムが励起することにより発生した蛍光X線を比例計数管で測定し、塗工演算を行う。
(2) γ線厚さ計
 γ線厚さ計は放射線応用機器の最も基本的な計器であり、γ線を被測定物に照射し、その透過γ線量から被測定物の厚さを測定するものである。
 例えば、被測定物の厚さをx、測定物がないときのγ線量をF0、γ線のエネルギーと測定物の材質によって決まる定数(吸収係数)をμとすると、透過γ線量Fは下式で表される。
(4.1)
 従って、μが既知であり、FとF0が測定されれば被測定物の厚さxは計算で求められる。
 γ線のエネルギーが高い場合、板厚が変化しても吸収量の変化が小さい為、吸収量から板厚を計算するときは小さな吸収量変化を拡大する形になり、測定誤差が大きくなる。 逆に、γ線のエネルギーが低い場合、わずかに透過したγ線を板厚にするため、小さな吸収量変化を拡大する形になり、また測定誤差が大きくなる。 従って、被測定物の厚さに応じて吸収係数が適当な範囲になる様、γ線のエネルギーを選択することが必要となる。
 これにはγ線のエネルギーを変えることで対応しており、半減期、価格、入手の容易さなどの観点から、241Am,137Csのγ線源を用いる。
 γ線厚さ計は主に鉄鋼業に使用され、図4.2.1-4に示すとおりγ線源を格納する線源部と、γ線を検出する検出器、測定物を挟んで線源部と検出器を保持するC型フレーム、検出した信号を厚さに変換する変換器から構成される。
 線源容器は耐火性容器として製作され、漏えい線量を小さくすると同時に測定精度を向上させるためのコリメータ付き鉛シールドと、遠隔操作のシャッタ機構とで構成される。
 241Amを使用した厚さ計では、検出器としてⅩeガスを封入した電離箱が主に使用され、137Csを使用した厚さ計ではプラスチックシンチレーション検出器が用いられる。
 変換器は検出器出力のA/D変換を行い、デジタル化された電圧信号は演算処理器にて各種の補正を受けた後、被測定物の厚さに換算される。
 なお、C型フレームには、フレーム全体の駆動用電動機とシャッタ開閉表示灯が取り付けられており、使用場所が熱間圧延工程の場合は、フレーム自体を水冷するとともに、遮熱カバーが取り付けられる。
図4.2.1-4 γ線厚さ計の測定装置
 241Am線源を使用した厚さ計は 8mm程度までの鋼板、4mm程度までの銅板、20mm程度までのアルミ板測定、137Csを使用した厚さ計は4.5mm~100mm程度までの厚板鋼板測定、3方向放射線ビームを使用したシームレスパイプ、H形鋼測定に用いられる。
(3) Ⅹ線厚さ計
Ⅹ線厚さ計は、Ⅹ線の透過線量が被測定物の厚さに対応して変化することを利用して、被測定物の厚さを測定する装置で、高精度、高速応答を特長とし、主に鉄鋼業の圧延ライン、検査ライン等に設置され、高速走行中の被測定物の厚さを非接触で連続的に測定する。
Ⅹ線厚さ計は、図4.2.1‐5に示すようにⅩ線を放射させるⅩ線発生器、校正曲線(検量線)を作成する基準板、被測定物で散乱、吸収されたⅩ線を検出する検出器(電離箱、電離電流を演算処理部に取り込める形に変換するプリアンプ)、これらを保持するC型フレーム、各種の補正処理を行い厚さ信号として出力する演算処理ユニットから構成される。
 この厚さ計は、あらかじめ校正用基準板を使用して、測定範囲全域の校正曲線を作成し、検量線として記憶しておく。そして、測定時には被測定物を透過して得られた検出信号を検量線にあてはめて板厚を求める。
 Ⅹ線の場合、吸収カーブが対数を取っても直線にならないので、測定範囲全域を複数の測定レンジに分割し区間毎に近似する。 校正曲線は、各測定レンジ毎の検量線の組合せにより表される。
 検量線作成時には、自動的に基準板の挿入、検出器出力の読込等が行われ、校正データは演算処理され演算処理ユニットのメモリに記憶されます。そして、被測定物の測定時には検出器出力を読込、記憶された検量線から板厚を演算処理して出力する。
 図4.2.1‐6に代表的なX線厚さ計の外観を示す。
図4.2.1‐5 X線厚さ計の基本構成
図4.2.1‐6 Ⅹ線厚さ計
 鉄板を測定するⅩ線厚み計には冷延用と熱延用があり、冷延用は13mmまでの軟鋼板の測定に、熱延用は30mmまでの軟鋼板の測定に用いられる。 また、銅板、チタン板、アルミニウム板等の測定にも使用される。
(4) 配管肉厚測定装置
 配管肉厚測定装置は配管の肉厚を測定する装置で、保温材の外から、γ線を3方向より正三角形を形成するように照射して、正三角形の頂点のそれぞれの肉厚を求めている。
 測定原理式を示し、図4.2.1-7に測定原理図を示す。
図4.2.1-7 測定原理図
<連立方程式
 図4.2.1-8に標準的なシステム構成図を示す。γ線照射器はコリメータで遮蔽されており、放射線源は137Csまたは60Coが主に使用される。検出器はCsI(Tl)もしくは、NaI(Tl)シンチレータが用いられ、環境変化等の補正を行いながら放射線量を検出している。γ線照射器と検出器は走行台車に固定され、走行台車はガイドリングに取付けて、正三角形を形成するように放射線ビームを照射して測定し配管肉厚を算出している。配管肉厚測定装置は主に発電プラント、石油化学や鉄鋼プラントの配管を使用する設備で、配管減肉量の監視・管理に使用される。
 図4.2.1-9に配管肉厚測定装置の外観を示す。
図4.2.1-8 システム構成
図4.2.1-9 配管肉厚測定装置