3.2.8 環境放射線モニタ

 環境放射線モニタは、原子力施設や放射線施設の周辺をはじめ、公共施設や居住地に設置され、屋外の環境放射線を連続的に監視するモニタである。環境放射線モニタは、モニタリングポストまたはモニタリングステーションと称され、環境放射線測定機器を装備した局舎またはキュービクルの形態で設置している。異常により放射性物質が周辺環境へ放出・拡散していないかを監視することが目的である。主な測定対象は空間γ線の空気吸収線量率または空気カーマ率で、単位はGy/h(グレイ/時)を用いる。自然放射線レベル(約40~100nGy/h)から事故時のような高い線量率レベル(約100mGy/h以上)まで、広範囲にわたり監視できるようになっている。そのため、低い線量率レベルを測るNaI(Tl)シンチレーション検出器と、高い線量率レベルを測る電離箱など、種類の異なる2つの検出器により構成されている。なお、測定対象として中性子の空気吸収線量率、空気中放射性物質濃度、気象情報等を加える場合もある。
 環境放射線を測るモニタリングポストは、局舎等の屋根の上部または地上に設置したドーム状の容器に検出器が格納されている。事故発生時などは、放射性物質は空気中を拡散するので、側面から鉛直上方向に対して感度を持つように設計されている。
 NaI(Tl)シンチレーション検出器は、入射するエネルギーに応じた波高のパルスが出力され、計測部にてエネルギー区分毎の出力パルス数を計数し、これにエネルギー区分毎の線量率/計数率の変換係数を乗じて線量率を出力する。この検出器は、温度依存性が高いため、モニタリングポスト等では局舎等に空調機を設けて検出器の温度を一定に保つ工夫や検出器内部温度を測定し、検出器出力を補正する工夫がなされている。
 モニタリングポスト用電離箱は、電離箱内の気体を加圧し、1~105μSv/h程度の広い測定範囲を持ち、球形にして方向依存性を良くしている。
 環境放射線モニタは常時線量率を監視しており、そのデータは監視システムで集中管理され、自治体などからその値が公表されている。監視システムは、原子力施設周辺の環境放射線および気象要素などの測定データをテレメータ装置で収集し、常時集中監視するシステムである。このシステムは、月間・季間・年間などの統計・解析処理、住民への測定結果の広報などの役割を果たす。主な監視項目は次のとおり。

  • 空間γ線線量率、計数率
  • 空気中放射性物質濃度(ダスト計数率など)
  • 風向・風速・温度・湿度・雨量・感雨・積雪深
  • 日射量、放射収支量その他

 システムは測定局,中央監視局および副監視局などから構成され、測定器等を除く構成機器はテレメータ装置、データ処理装置、補助記憶装置、作表機器、ディスプレイ、表示盤などがある。主な処理内容としては、データ収集・演算処理、データの蓄積、時報・日報・月報・季報・年報などの作表、ディスプレイによる各種グラフ表示、作図、データ修正・補充、表示盤による広報表示、統計・解析などを行う。
 環境放射線の測定結果は、通常変動が見られる。これは、測定値の統計的なゆらぎによるもののほか、気象状況などにも影響を受ける。例えば、降雨時にはラドンなどの空気中の天然の放射性物質が地表に降下するため、線量率が一時的に増加することがある。また、積雪時は地表からのγ線が遮蔽されるため、線量率の減少をもたらすことがある。
図3.2.8-1 環境放射線モニタおよび監視システムの例