2.2.10 固体飛跡線量計(SSNTD)

 各種の絶縁性固体は、通過した陽子や重荷電粒子の飛跡を記録することができる性質を持っている。これらの絶縁性固体を検出素子として利用して、入射した放射線量を測定するものを固体飛跡線量計(SSNTD:Solid State Nuclear Track Dosemeter)という。
 固体飛跡線量計を中性子の測定に利用する場合、中性子自身は電荷を持っていないために、これらの検出素子に直接飛跡を記録することができない。そのため、線量計に入射する中性子と検出素子やその回りの物質との相互作用によって発生する荷電粒子の飛跡を記録することで、中性子線量を測定する。
 中性子線測定用の検出素子としては、一般的にアリル・ディグリコール・カーボネート(ADC)プラスチックを使用する。これらの検出素子に高速中性子が入射すると、検出素子に含まれている水素原子との相互作用によって発生する反跳陽子が記録されるので、これを計測して入射した中性子線量を測定する。また、これらの検出素子は、中性子線に対する感度を上げて低線量域までの測定精度を確保するために、または、広範なエネルギー領域の中性子線を測定可能とするために、水素原子を多く含む物質や中性子との相互作用でα粒子等の重荷電粒子を発生する物質(コンバータ)と組み合わせて使用する。
 中性子との相互作用によって発生した荷電粒子がADCプラスチックを通過すると、その入射経路に沿って高分子の鎖が切断されて飛跡として記録される。しかし、飛跡は非常に微細なもので、そのままでは通常の光学顕微鏡では観測することができない。このADCプラスチックをアルカリ溶液に浸漬すると、飛跡の部分が選択的にエッチングされることで入射経路に沿って穴があいたようになり、光学顕微鏡で計数することが可能な大きさに拡大される。このようにエッチングによって拡大された飛跡をエッチピットといい、このエッチピット密度を測定することで、入射した中性子線量を算出する。