2.2.7 熱ルミネセンス(TLD)素子

 常温に保った状態の蛍光物質に放射線が入射すると、物質内原子の電子は、基底状態からさまざまの励起状態に遷移する。励起状態にある電子は光を放出して時間とともに基底状態に戻っていく。しかし、十分に時間がたってほとんど発光が見られなくなったときにも、蛍光物質中にはさまざまの準安定な励起状態が残されており、この状態にある電子は直接には光を放出しない。
 ここで蛍光物質の温度を少しずつ上昇させると、準安定状態にある電子は格子振動の助けを借りて、発光可能な状態に移り、熱蛍光(熱ルミネセンス)を発生する。図2.2.7-1にその発生機構を示す。
 絶縁体や半導体の大部分は熱蛍光を発する性質を持っていて、発光する温度は低温から数百度まで分布している。一定速度で昇温させた場合の温度に対する発光強度の分布はグロー曲線と呼ばれる。図2.2.7-2にグロー曲線の例を示す。この熱蛍光を光電子増倍管で測定し、そのグロー積算値から放射線量を求めることができる。
図2.2.7-1 熱蛍光の発生機構
図2.2.7-2 Li:Cu蛍光体のグロー曲線の例