1.2 放射線応用計測器

 放射線応用計測器の実用化が始まったのは1950年代の半ばからである。1954年に後方散乱形β線厚さ計をアルミニウム箔製造プロセスへ適用することから始まった。これにより、製造ラインの非接触測定が実現できた。同じ年に、透過形β線厚さ計が実用化され、ゴムシート製造ラインで使用された。
 続いてγ線レベル計、γ線厚さ計、γ線密度計、中性子水分計などが実用化された。
 放射線応用計測器の基本構成は、「線源、検出器、電子回路」であり、それぞれについて1950年代から1960年代にかけて工業利用化の研究がされた。検出方式は、用途により電離箱式とシンチレータ式に大別される。
 密度計のような電離箱方式では、微少な電離電流を検出する必要があり、シリコンダイオード可変容量素子を利用した固体化電位計を実現することにより安定性の向上が実現できた。
 レベル計の検出器は最初にGM計数管が使われていたが、短寿命で工業用には使用できないことが分かり、パルス計数方式のNaI(Tl)検出器、プラスチックシンチレーション検出器が開発された。
 ハードウェアの実用化に加え、「測定システムの最適化設計」が進められた。1956年頃には鋼板、フィルムあるいはタンク内液体などの測定対象物質とその単位面積当たりの重量に最適な線源核種およびその強度の選定方法に関する理論が確立された。工業用測定には、線源と検出器間(測定空間)にある測定対象の位置変動、測定空間の空気層の密度変動、測定空間内に存在する蒸気や異物などの外乱物質、線源と検出器の相対的位置変動などが外乱として存在しますが、様々な工夫とユーザの協力を得るなどの努力により、1950年代の終わりには、測定システムとしての原理設計は一応の完成を見た。
 1960年代はアプリケーション開発の時代であり、鉄、紙、化学プロセスなどそれぞれに特化した専用の計測制御システムが登場した。例えば抄紙機への適用では、まずβ線による坪量(紙単位面積当たりの重量)の測定から始まった。次に、水分量測定の要求が発生し、赤外線吸収方式の水分センサが使われた。続いて、紙の物理的厚さ、色、光沢、平滑度などのセンサが前述のセンサと共存して抄紙機測定制御システムを構成するようになった。
 1970年代以降は、マイクロプロセッサや光ファイバなど時代の最先端技術を取り入れて、性能と機能の向上が図られた。 特にMPUの登場は、測定信号のリニアライズ、指数関数演算、外乱影響のリアルタイム補正、測定システムとしての自動校正などに威力を発揮した。これにより従来のディスクリート素子による回路校正が陳腐化し、性能が上回り、自由度の高いシステムを実現できた。 この時代はまた、素材への適用から二次加工材への適用に広がりを見せた時期でもあった。例えば、磁気フィルム厚さ計、シームレスパイプ厚さ計、ミル直近厚さ計に代表される。
 環境問題の高まりに対し、公害基本法が1967年に制定され、その3年後に、石油中の硫黄分をX線の透過率で測定する石油硫黄計が開発された。
 1970年代に入るとオイルショックによる省エネルギーを背景に、火力発電所等向けに、石油中の水素と炭素の比率をX線の透過率で連続測定し、高発熱量を演算するカロリー計が開発された。
 欧米諸国に比して法規制が厳しく、放射線応用計測器の有効利用を制限しているとの考えから1982年に「表示付装備機器制度」が導入された。この制度は、一定の設計条件などをクリアして承認された機器に対しては、使用の条件および放射線取扱主任者の条件を緩和して利用できる道が開かれた。その第1号としてガスクロマトグラフ用エレクトロン・キャプチャ・ディテクタ(GC-ECD)が導入されたが、同時期に水道中のトリハロメタンの存在が全国的に問題となり、GCECDの需要が急激に高まった。3.7MBqを超えない密封線源は放射線障害防止法(当時)の規制対象外であり、法的安全管理の範囲を外れるため、取扱主任者も不要となり、ユーザにとっては有利な点でもある。1990年代には、トンネル掘削シールド工事用密度計が実用化され、放射線応用計測器は固定して使用するという従来の概念を覆して、機器の移動測定を可能とした。
 しかし2005年度には国際基本安全基準(BSS)で提唱された免除レベルを取り入れた法改正が施行され、従前の法規制対象外とされていた3.7MBqを超えない密封線源が核種によっては、規制対象となったことから、新たに設計認証制度が新設され、安全性等が確認されると、表示付認証機器として、使用開始後の届出だけで、移動して使用出来るようになった。
 放射線応用計測器の分野は、成熟していると思われがちであるが、安全な微弱放射線で充分な計測が出来るように今後も改良され、これからも産業の発展に伴い、非接触かつ透過して計測できるなどの放射線の特徴を生かしたアプリケーションが次々と拡大していくはずである。
 主な放射線応用計測器の完成時期を表1.2に示す。

表1.2 放射線応用計測器年表
年代 放射線応用計測器
1954年 β線反射形厚さ計
β線透過形厚さ計
1956年 γ線レベル計(GM計数管式)
1957年 γ線厚さ計
1958年 γ線密度計(シンチレーション式検出器)
1959年 γ線密度計(電離箱式)
1960年 中性子水分計(BF式)
1961年 熱間圧延厚さ計(アナログ式)
紙用厚さ計
1963年 厚さ計(固定電位計式)
1964年 ECDガスクロマトグラフ
1966年 連鋳用レベル計
γ線インターロック装置
1969年 抄紙機用坪量水分計
H形鋼用厚さ計
1970年 フィルム用厚さ計(Pm)
石油硫黄計(透過Ⅹ線式)
1976年 γ線厚さ計(12bitマイコン搭載)
熱間厚延厚さ計(12bitマイコン搭載)
Ⅹ線マルチチャンネル検出器
1979年 石油カロリー計(透過Ⅹ線式)
1982年 中性子水分計(Cf)
1983年 磁気フィルム用厚さ計(β―Ⅹ線)
1984年 γ線厚さ計(16bitマイコン搭載)
レベル計(光ファイバ式)
1985年 小型シームレスパイプ厚さ計
1986年 ミル直近厚さ計
1989年 塗工量計(Ca量計)
1993年 γ線レベル計(プラスチックシンチレーション検出器)
1994年 Ⅹ線式フィルム・シート厚さ計
1995年 γ線厚さ計(32bitマイコン搭載)
2001年 γ線厚さ計(FAコンピュータ搭載)
2005年 Ⅹ線式厚さ計(半導体検出方式)
2008年 Ⅹ線式厚さ計(センサとLAN接続)
2010年 電池用小型厚さ計
2013年 配管肉厚測定装置